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農水次官ら処分 癒着の解明には程遠い

2021/2/28 6:41

 農林水産省が枝元真徹(まさあき)事務次官ら6人を処分した。収賄罪で在宅起訴された吉川貴盛元農相と贈賄側の鶏卵生産大手・アキタフーズグループの秋田善祺元代表との会食に同席しながら費用を払わず、国家公務員倫理規程に反したと判断した。

 会食はアキタ側の供応だった。まっとうな感覚の持ち主なら即座に利害関係にあると疑うだろう。辻元清美・立憲民主党副代表の言を借りれば、総務省接待問題とともに「接待パラダイス」と言うしかない。感覚がまひしているのである。

 1998年の旧大蔵省接待汚職をはじめ、不祥事が発覚するたびに各省庁は規律を徹底させてきたはずだ。倫理規定も汚職事件を受けて2000年に施行された。それでも便宜供与が後を絶たないのはなぜか。

 民間の声を政策に生かすのはいい。「現場」を持たない省庁にあっては欠かせない面もあろう。しかし接待される必要はない。懇親は会費制や割り勘にすれば済むはずだ。今回、農水省が新たな会食のルールを独自に定めたのは当然だろう。

 だが、これで事が済むとは思えない。問題の根っこには政治家と官僚の関係があるからだ。一部の者のための政治に官僚がなびく。安倍政権から菅政権へと受け継がれた「ゆがみ」のようなものといっていい。

 秋田氏は日本養鶏協会の副会長や特別顧問を歴任した。安倍政権で農相を務め「農水族の重鎮」という西川公也氏が2017年の衆院選で落選すると、社の顧問に迎えた。この時、西川氏は非常勤の国家公務員で農業政策について首相の諮問に答える内閣官房参与だった。

 秋田氏は18年11月から19年8月にかけて当時農相の吉川氏に現金計500万円を渡したとして贈賄罪に問われている。それ以前にも立件されなかった計1300万円に上る授受があるほか、西川氏に18年以降に数百万円を提供したとされる。

 にもかかわらず、西川氏が不問に付されたことは解せない。西川氏と処分された農水官僚を国会に呼び、説明責任を果たすよう強く求める。農政を巡る政官業癒着のうみは、この際出し切るべきではないのか。

 家畜を快適な環境で飼育する「アニマルウェルフェア」(AW、動物福祉)の国際基準を巡って秋田氏は政官に陳情を繰り返していたという。AWは世界的な潮流とはいえ、日本に適した進め方はあっていい。

 業界の長年の努力によって日本の鶏卵消費量は欧米に追いつき追い越した。半面、鶏卵の高い自給率を誇りながら飼料や種鶏の自給率が極めて低い。鶏卵は身近な食であるだけに、一連の課題の解決は消費者も巻き込む動きにすべきだろう。

 秋田氏は「業界発展のためにしたこと」と述べているが、金銭や接待による工作以外にすべはなかったのだろうか。

 食料・農業政策は国の根幹に関わることを前提に、補助金で支えられている面もある。それだけに政官業の関係はガラス張りでなければなるまい。

 先日の国会ではアキタ側に対する補助金の交付額を問う質問に対し、野上浩太郎農相は「個別企業の経営状況」を盾に答弁を拒んだ。これでは消費者・納税者の納得は得られない。あらためて丁寧な説明を求めたい。

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