コラム・連載・特集

ミャンマー軍政 武力行使は即刻やめよ

2021/3/2 6:54

 ミャンマー国軍のクーデターから1カ月になる。軍政への抵抗運動が広がる一方で、国軍の武力による弾圧もエスカレートしている。おとといは多数の死傷者が出る惨事となった。

 非暴力のデモに参加している市民への実弾の発砲など到底許されない。武力行使や暴力行為は即刻停止すべきである。

 国軍は国民のプライバシー保護と治安に関する法律の条項の一部を停止し、裁判所の許可を得ないで逮捕したり家宅捜索したりすることを可能にした。夜半にデモ参加者を自宅で拘束する暴挙にも出ている。治安当局は恣意(しい)的な法解釈による拘束や家宅捜索も自制すべきだ。

 国軍に軟禁された後、いずこかに移送された国家顧問兼外相アウン・サン・スー・チー氏の消息も憂慮される。無線機を違法に輸入し使用した容疑で訴追され、新たに社会不安をあおった容疑でも訴追されたという。だが、一連の手続き自体に疑義があると国民が反感を募らせているのは当然といえよう。

 1980年代以降の抵抗運動は国軍に武力で弾圧されてきた。今回は香港やタイなどの運動の影響もあって、若者を中心に公務員や性的少数者(LGBT)の団体を含めて、多様な集団が自発的に参加しているという。不服従運動やゼネストも全土に広がり、政府機関や経済はまひして国軍の統治能力のなさを露呈するばかりである。

 運動が会員制交流サイト(SNS)を駆使して全世界に情報を発信し、国際世論を味方に付けたのは賢明である。どちらに理があるのか明快だろう。

 国連人権理事会は先月中旬、ミャンマー情勢を巡る特別会合をジュネーブで開催し、スー・チー氏らの即時解放などを求める決議を全会一致で採択した。ミャンマーのチョー・モー・トゥン国連大使が国連総会で国軍を非難した事実も重い。大使は解任されたが、国連総会は国軍の政権を承認していない。

 国際社会は国軍への働き掛けについては決め手を欠く。ミャンマーは武器調達を中国やロシアに依存し、米欧による制裁の効果が読めないためだ。しかし、デモへの銃撃で多数の死者が出るに及んで米国は新たな制裁措置へと動き、欧州連合(EU)も同調する見通しである。

 国軍とのパイプが太いという日本はどうか。加藤勝信官房長官は「平和に行われるデモへの実力行使は許されない」と述べたが、出遅れは否めない。

 キリンホールディングスは国軍系企業との合弁解消を発表した。合弁が国軍の資金源になりかねないことを思えば、一つの見識だろう。トヨタ自動車の新工場の稼働も延期された。

 さらに、日本政府は政府開発援助(ODA)の規模縮小などを検討しているという。日本のミャンマーに対するODA実績は先進国では米英を上回る約1900億円に上るだけに、国軍に自制を促すための有効なカードとして使うべきである。

 むろん、経済制裁は国民生活に広く悪影響を及ぼす恐れがあろう。ミャンマーをさらに中国寄りにするとの指摘もある。だが、中国にとっても国境を接するミャンマーの政情不安は決して望むところではあるまい。

 影響力を持つ国々や国連機関の総力で、一刻も早く国軍の暴走を止めるべきだ。

  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

社説の最新記事
一覧