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ネット広告 消費者保護にルールを

2021/3/3 6:45

 米グーグルなど巨大IT企業が手掛けるインターネット広告の取引実態について、公正取引委員会が調査報告書をまとめ、独禁法違反の恐れのある行為について見解を示した。

 成長を続けるネット広告市場では、巨大IT企業が圧倒的なシェアを背景に強大な影響力を持つ。広告主や消費者との関係が「独禁法上の優越的地位の乱用」に当たりかねない現状に危機感を示し、警鐘を鳴らす狙いがあったのだろう。

 寡占が進むにつれ、利用者の個人情報が知らないうちに広告目的で使われるなど、弊害も目立っている。個人情報の保護はもちろん、取引の透明化や公平化を確保するためにも一定のルールが欠かせなくなっている。

 ネット通販などの取引の透明化を促す新法が先月施行された。政府はデジタル広告の分野を規制対象に追加する方針だ。市場の健全な発展を支える視点にも配慮しながら、報告書を踏まえて規制強化策の具体化を急ぐ必要がある。

 巨大IT企業は検索や会員制交流サイト(SNS)などのサービスを無料で提供しているが、その代わりに利用者の膨大な個人データを集める。情報の種類は名前や生年月日にとどまらず、検索や購入履歴、交友関係など多岐にわたる。

 このデータを活用し、消費者の関心や好みに応じた広告を配信することによって巨大IT企業は大きな収益を得ている。

 個人データを集めるほどネット広告の効果は上がるとされ、運営サービスを独占する巨大IT企業が消費者などに対して有利な立場になりやすい。

 ところが、公取委の調査では「どんな情報が広告目的に収集されているか認識していない」とする利用者は4割にも上る。

 報告書では、利用目的について十分な説明がないまま個人情報を集めたり、消費者が情報の利用を拒んだ後も広告に利用したりする場合は「優越的地位の乱用」に当たる恐れがあると強く戒めた。消費者保護の観点からは当然の指摘といえよう。

 巨大IT企業はSNSなどの運営に加えて広告配信の仲介業を手掛けているケースが多く、取引実態を見えにくくしているとの疑念も生じさせている。広告料や表示方法が不透明で、発注した広告がどのサイトに出たかなど効果も把握しにくい。

 報告書はそうした広告主らとの取引関係についてもメスを入れた。巨大IT企業が契約やシステムを一方的に変更したり、ほかの仲介会社を使わせないようにしたりする行為を具体的に列挙し、公正な競争をゆがめかねないと指摘した。

 サイトの価値は閲覧数が増えるほど評価され、広告掲載料が上がるケースが多い。刺激的な情報やフェイクニュースで関心を集めようとする行為が横行すれば、消費者が正確な情報を受け取れなくなる懸念も示した。

 海外でも巨大IT企業の市場支配に対する視線は厳しい。米国の司法省は昨年末、反トラスト法(独占禁止法)違反の容疑でグーグルを提訴した。英国やオーストラリアでもネット広告分野の寡占についての調査が進められている。

 影響は一国だけにとどまらない。各国が連携し、データの独占に目を光らせる新たなルールづくりが急務だ。

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