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中国全人代開幕 国際社会の懸念を拭え

2021/3/6 6:47

 中国の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)が、北京で開幕した。李克強首相は政府活動報告で、新型コロナウイルス対策の成果を誇り、中長期の経済発展目標を打ち出した。

 習近平国家主席が提唱した内需拡大を柱に成長路線を突き進むようだ。昨年は示さなかった、国内総生産(GDP)成長率の目標を、今年は6%以上とする方針も示した。

 香港の選挙制度も見直す。政治の舞台から民主派を一掃し、国内の引き締めを図る狙いなのだろう。

 中国の富国強兵路線や非民主的な政治体制に対し、日本をはじめ国際社会は不信を深めている。「世界一の経済大国」を目指すなら、まずは国際的信頼を得る必要がある。

 全人代は11日までの日程で、中期的な経済目標を定めた5カ年計画(2021〜25年)と併せ、35年までの長期目標も策定する。習氏が最高指導者の地位に居座るための布石なのだろうか。1人当たりのGDPを中程度の先進国の水準に引き上げるという。新型コロナでグローバル経済が低迷する今、国内経済を循環させながら、国外から投資を呼び込む「双循環」戦略を推進したいらしい。

 しかし「新冷戦」とまで称される米国との貿易摩擦は、バイデン新政権に代わっても長期化しそうだ。都市部を中心に進む少子高齢化は、経済発展の重荷となりかねず、都市と農村部の貧富の格差やコロナによる破産など国内問題も山積している。

 そうした課題や不満から国民の目をそらすため、中国が強権政治や軍拡路線をますます加速させないか、懸念が拭えない。

 その一つが、香港の民主化運動弾圧である。習指導部は、反政府デモを香港の社会、経済を脅かすリスクと位置付け、民主派の当選を困難にする制度の構築を目指している。

 昨年の香港国家安全維持法(国安法)の施行に続く統制強化だ。国際的な公約である「一国二制度」を骨抜きにするこうした動きは、看過できない。

 にもかかわらず、習指導部は、香港に高度の自治を認めた「一国二制度」について、「愛国者による香港統治」に基づかなければならないと強調している。国外からの批判には「外部勢力の干渉に断固反対」と対立姿勢を明確にしている。国際的な約束事なのだから「内政干渉」との言い分は通るまい。

 香港の問題は人権問題でもある。新疆ウイグル自治区でのウイグル族弾圧も、先進諸国にはとても受け入れられない。

 さらなる懸念は、新型コロナに苦しむ米国の隙を突き、覇権拡大を加速させていることだ。台湾南西の防空識別圏に軍機を繰り返し侵入させるなど、台湾への威嚇を強めている。沖縄県の尖閣諸島を巡って対立する日本にとっても人ごとではない。

 増大するばかりの国防費も見逃せない。21年予算案では、国防予算は前年比6・8%増の1兆3553億4300万元(約22兆5千億円)にも上る。

 ことしは中国共産党が自ら誇る創建100年の節目である。人権をないがしろにし、国際平和を揺るがすようなことをすれば、レガシーは残せまい。

 名実共に大国であるためには、まず国際社会の懸念を払拭(ふっしょく)する努力が求められる。

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