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薬都の信頼揺らぐ不祥事

2021/3/6 6:47

 「三方よし」は近江商人の信条として今に知られる。売り手と買い手、それに世間が満足できる商いをせよ、と説く。では「先用後利」はというと、越中売薬の信条である。まず急病のお役に立て、と説く▲一通りの薬を客に預け、使った分のお代を後で頂く置き薬。立川志の輔さんが新作落語に仕立て、その商いは隠密か新手のゆすりたかりかもしれぬ―と一人の番頭があらぬ疑いをかけて笑わせる。だが、こちらは本当に商いの道を踏み外してしまい▲富山市の日医工が捨てるはずの錠剤を砕くなどして、後発薬を製造していた。偽りは10年に及び、地元紙は「薬都の信頼揺らぐ」と報じる▲ジェネリックとも呼ぶ後発薬は安くて医療費を抑える効果があると、国が推奨してきた。この10年で日医工も急成長したが、それだけに欠品を恐れて無理な出荷を続けてきたという。福井県の小林化工が爪水虫治療薬で問題を起こしたばかり。業界全体の信頼を損なうことになる▲「せっかく後から出すんですもの。もっといいお薬を目指したい」と、黒柳徹子さんの声が聞こえる。別の後発薬メーカーのCMだが、その通り。小欄は「後用公利」なる造語をひねり出してみる。

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