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震災10年、まちの復興 課題検証しモデル描け

2021/3/10 6:45

 東日本大震災の津波で壊滅的な被害を受けた東北沿岸部の被災地ではこの10年、32兆円を投じて規模、内容とも前例のない復興事業が進められてきた。

 国が掲げた「創造的復興」の下、安全性を追求して市街地を造り直し、地盤のかさ上げや高台への移転、防潮堤の整備などを展開してきた。

 東京電力福島第1原発事故の処理作業が続く福島県を除き、宮城、岩手両県では、住まいや交通インフラなどのハード整備はほぼ完了した。

 巨費をつぎ込み強靱(きょうじん)化に取り組んだものの、人口減や空洞化といった震災前からの課題は解決の糸口さえ見つからないまま残った。津波で被災した多くの自治体では震災前より人口が減り、新たなまちにできた宅地にも空き地が目立つ。

 津波で大きな被害の出た岩手県陸前高田市では、中心部の土地をかさ上げして宅地を造成したが、うち6割ほどの使い道が決まっていない。

 昨年末までかかった事業の長期化に待ちきれず、住むはずだった人が民間で早く造成された別の場所へ移り住んだり、高齢化で再建を断念したりするケースが多かったという。

 岩手、宮城、福島の被災3県で利用されていない造成地は3割を超える。

 行政が進める復興事業のプロセスと、被災者が住まいなどの選択を迫られる生活再建のプロセスの時間軸にずれが生じたのではないか。当初の想定と現実との間でミスマッチを招いてしまったといえる。

 まちづくりの制度で活用できたのが「土地区画整理事業」や「防災集団移転促進事業」などに限られ、ほかに手段がなかったことが背景にある。

 両事業とも用地取得が欠かせず、地権者や住民の同意を得る手続きなどに時間がかかった。迅速さが求められる生活再建にそぐわなかったのは明らかだ。

 日本で初めて人口が減少する局面で進められた復興のまちづくりの教訓は何か。過疎地再生の先進モデルになるとも期待されていた。次なる大災害に生かすためにも検証が欠かせない。

 大災害が起きれば、地域も人もすぐに立ち直るのは難しい。まちの将来を見据えた復興計画を準備しておく「事前復興」の重要性が指摘されている。

 住民と自治体が話し合って災害が起きた後にどう地域を再建するのか絵を描いておけば、カネも時間も無駄にせずに済む。目指した方向とずれたまちづくりになれば、新たな地域課題になりかねない。

 人口減少や働き方の変化に応じ、柔軟に見直していくことも欠かせない。安全・安心なまちづくりの第一歩となり、持続可能な地域づくりにもつながるはずだ。

 政府はきのう2021年度からの新たな復興の基本方針を閣議決定した。原発事故で住民の帰還が遅れている福島県では移住や定住を推進し、宮城、岩手両県では心のケアや地域コミュニティーの形成を支援する。ソフト面の施策に軸足を移す。

 被災地の復興状況は、地域によって異なる。これからは個々の状況に応じてきめ細かな支援が重要になる。菅義偉首相は「復興は総仕上げの段階」と位置づけるが、被災者の「心の復興」に区切りはつけられない。

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