広島の桜「標本木の変更」で全国トップ? 開花宣言なぜ早かった【こちら編集局です】
広島地方気象台が11日発表した広島県内の桜の「開花宣言」。今年の全国トップの早さで、歴代でも2番目だった。「標本木を変えたからでは?」。広島市中区の縮景園で宣言の様子を見守った市民から、そんな疑問の声が漏れた。なぜ広島が今年は早かったのか、標本木の変更が原因なのか、調べてみた。
【写真】開花の日、先代の標本木は…
【動画】広島で桜開花、全国トップ
「早いよね」。疑問の声を寄せたのは広島市西区の住吉一彦さん(84)だ。「標本木が変わったからじゃないんかね」
標本木は、各地の気象台が開花日などを観測するために定めている木だ。確かに今年、同気象台は桜の標本木のソメイヨシノを別の木に変えた。従来の木の樹勢が弱まり、つぼみが少なくなったためという。
園内を見渡すと花が開いていたのはこの木だけ。近くの平和記念公園(同)の桜もまだつぼみの状態だった。「若い桜の木が標本木になったから『開花宣言』が早まっただけでは」。住吉さんはそう見立てる。
だが、同気象台の秋山幸三・主任技術専門官は異なる意見だ。「木の変更が原因とは考えにくい。他の桜もつぼみは膨らんでおり、1本だけ特別早く咲いたわけでもない」と述べる。
気象庁では、桜の観測地の全国58地点で「正」と「副」の標本木を複数決めている。突然の枯れなどに備えるためで、広島では縮景園内に「正」が1本「副」が2本ある。今回、開花宣言に使う「正」1本を決めるに当たり、同気象台は2013年からは特別に6本をチェック。開花と満開の時期が、従来の標本木と一番ずれのない木を選んだという。
では、なぜ今年こんなに開花が早かったのか―。日本気象協会中国支店(中区)は、昨年末から今年1月上旬にかけてたびたび強い寒気が流入したことで、寒さで桜の芽が目覚める「休眠打破」が順調に進んだと分析。その後、2月と3月に暖かい日が続き、生育が促されたとみる。だが、こうした状況は広島に限った話ではあるまい。
「広島が飛び抜けて早かった要因は、天候だけでは説明できない」と中国支店の筒井幸雄・気象予報士。また旧標本木では周辺の桜がある程度咲いてから開花宣言をしていた印象があるとし「木が変わった影響も少なからずあるのでは。偶然早かったのか、来年以降も早く咲くのかチェックしたい」と述べる。
結局、開花宣言が大幅に早まった確たる理由は分からなかった。気候が原因なのは確かだろうが、「標本木の変更」説も全否定は難しいかもしれない。
ただ、取材中にあらためて感じたことがある。桜をめでる素晴らしさだ。花弁がほころぶさまは美しく、心が和んだ。新型コロナウイルス禍で日常生活はストレスが多い。けれども今年はゆっくり花見をしたい。もちろん感染症対策に気を付けて。(高本友子)
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