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香港の選挙制度 民意封じる許せぬ強権

2021/3/14 6:35

 中国の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)が、香港の選挙制度を見直す決定を採択した。

 決定は、選挙制度の見直しについて「国と香港を愛する者による統治を確保する」と強調する。香港政府のトップである行政長官や立法会(議会)議員の選挙から、あらゆる手段を使って民主派を排除する狙いだ。

 異論は許されず、中国共産党の指導を尊重する「愛国者」だけしか政治に参加できなくなる。民主主義の根幹である選挙が形骸化してしまい、香港の高度な自治を認めた「一国二制度」が完全に骨抜きにされる。

 昨年6月の香港国家安全維持法(国安法)施行に続く中国政府の強権行使と言わざるを得ない。民主化を求める民意を一方的に封じ込めようとする振る舞いであり、到底容認できない。

 今回示された新たな制度の概要によれば、選挙前と選挙自体、選挙後の3段階で民主派の排除を徹底する仕組みになりそうだ。詳細は近く開かれる全人代常務委員会で決められる。

 行政長官を選ぶ選挙委員会の規模や権限を拡充し、常に親中派の委員が圧倒的多数を占める仕組みを整える。選挙委の委員や行政長官、立法会議員の候補者が「愛国者」かどうかを審査する委員会も設け、立候補の段階で民主派をふるいにかける。

 立法会の定数も親中派が多数を占める選挙委や経済界の選出枠を増やす。市民が投票で選ぶ直接選挙枠の割合は減り、民主派が多数を占めることのできない理不尽な仕組みに変わる。

 民主派の候補が当選を果たしたとしても、中国や香港政府に対する忠誠心がないとみなされれば、いつでも議員資格を取り消される制度が国安法施行を受けて導入されている。

 英国から返還の際にまとめた香港基本法は、行政長官や立法会議員を最終的に普通選挙で選出することを目標にしている。

 民主派もその実現を目指していたが、今回の制度見直しで民主的な普通選挙の導入は絶望的になった。国安法で言論の自由を奪われた香港の人々にとって、今回の見直しで選挙によって抵抗する望みも絶たれることになる。憂慮すべき事態だ。

 大規模な反政府デモが続いた2019年、民主派は地方議会に当たる区議会選挙で8割を超える議席を得て圧勝した。昨年9月に予定されていた立法会選挙でも、過半数の獲得を目指していた。

 中国の習近平指導部にとっては、一党支配に盾突く存在自体が受け入れ難かったのだろう。国安法を制定し、香港当局が民主派議員を次々と逮捕、訴追した。立法会選挙も民主派躍進の危機感から延期した。

 李克強首相は全人代閉幕後の記者会見で「愛国者による香港統治は一国二制度の長期的な安定を確かにする」と述べた。だが一連の対応が基本法の精神に反しているのは明らかで、対外公約さえも軽んじている。

 日本や米国など先進7カ国(G7)の外相と、欧州連合(EU)の上級代表がきのう声明を出し、今回の選挙制度見直しについて「強い懸念」を表明した。香港の人々と価値観を共有する自由主義陣営の国々が結束を強め、中国が強権姿勢をあらためるよう国際世論の圧力を強める必要がある。

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