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夫婦別姓の反対文書 地方の声、封殺は許せぬ

2021/3/16 6:41

 夫婦が同じ姓を名乗るか、結婚前の別々の姓にするかを法的に選べる「選択的夫婦別姓」の議論が進まない。

 制度導入にかたくなに反対する自民党の国会議員有志が、賛同する意見書を採択しないよう求める文書を道府県議会議長に送りつけていた。衆参計50人が連名で党所属の42人に送付したもので、家族単位の社会制度崩壊を招くなどの理由を挙げている。

 男女共同参画担当相の丸川珠代氏も名を連ねていた。ジェンダー平等の旗振り役である担当相まで加わって国会議員が地方議会に圧力をかけていたとは、いただけない。議長が「地方の意思決定を軽視している」と反発するのも当然だ。国会は地方の意見を尊重し、法改正を進めるのが本来の役目ではないか。

 丸川担当相は旧姓を通称として使用している。ところが、選択的夫婦別姓に個人的に反対していることを国会で渋々認めた。個人的に別姓に反対する一方で、自分は旧姓を通称使用するというのは矛盾している。

 別姓に前向きな発言をしている菅義偉首相にとってもその姿勢や任命責任が問われよう。

 昨年末に閣議決定された第5次男女共同参画基本計画の策定過程でも、自民党の反対派議員は「選択的夫婦別姓」の文言を削除させている。要請文書もその延長線上の話だろう。しかし地方議員への「上から目線」は時代錯誤も甚だしい。

 1985年の男女雇用機会均等法成立などで女性の職場進出が進んでいる。明治期に始まった夫婦同姓では不利益を被る人が次第に増えてきた。民法は夫婦は夫、妻のどちらかの姓を名乗るよう規定するが、実際に姓を改めるのは96%が女性側だ。

 時代遅れの女性差別との批判が国内外でやまない理由にもなっている。法制審が選択的夫婦別姓を導入するよう答申してから既に25年もたつ。

 婚外子の相続差別や女性の再婚禁止期間は撤廃や短縮など改善された。選択的夫婦別姓だけが手付かずのままだ。昨年11月に男女共同参画会議が「踏み込んだ議論を期待する」と菅首相に要請したのもうなずける。

 地方議会ではこうした流れを受け、選択的夫婦別姓を求める声が強まっている。市民団体によると、全国178議会が別姓賛成の意見書を採択している。

 要請文書にこうした動きを封じる狙いがあるのは明らかだ。批判されても仕方あるまい。

 最高裁は2015年に夫婦同姓を合憲と判断した上で、制度改正に向けた議論も国会に求めた。ただ5人の判事は「違憲」として異論を唱えた。

 その最高裁が夫婦別姓を認めない家事審判を大法廷で審理することを決めた。改めて憲法判断を示すとみられる。にもかかわらず、宿題を出された国会は十分な議論を重ねていない。

 東京五輪組織委員会の森喜朗前会長の女性蔑視発言で、日本には厳しい批判が浴びせられたばかりだ。夫婦同姓を義務付けていることについて、国連女性差別撤廃委員会は、日本政府に再三是正を勧告している。

 そもそも夫婦同姓を法で縛っている国は日本だけだ。選択的夫婦別姓の導入をためらう理由はない。男女共同参画社会の実現へ向け、国会は今こそ本気で取り組まなくてはならない。

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