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決別 金権政治

被買収放置、疑問の声目立つ 「同様の事件繰り返される」【決別 金権政治】<第5部・あしき慣習>(5)

2021/3/17 22:50
東京地検が入る法務検察合同庁舎(東京・霞が関)。大規模買収事件では、現金を受け取った議員らの刑事処分をしていない

東京地検が入る法務検察合同庁舎(東京・霞が関)。大規模買収事件では、現金を受け取った議員らの刑事処分をしていない

 自民党の広島市議が、釈然としない思いを打ち明ける。「厳正に処分されれば、二度とこんなことは起こらないだろう。このままでは、同じような事件が繰り返されてしまう」

 2019年の参院選広島選挙区での大規模買収事件では、市議会でも13人が元法相河井克行(58)=衆院広島3区=からそれぞれ30万〜70万円を受け取ったとされる。被買収は公選法で罪に問われ、首長や議員の場合は罰金刑以上なら失職。公民権も一定期間停止され、選挙に立候補できなくなる。しかし検察当局は今回、現金を受け取った側の刑事処分をしていない。

 市議13人を含め、克行らから現金を受領したと検察が認定した広島県内の政治家は40人いる。このうち、辞職したのは8人だけ。検察の処分が出ていないことを理由に辞職しない議員も目立つ。

 ▽「居座り大問題」

 中国新聞社が昨年12月に実施した県内の地方議員アンケートでは、事件を受けて必要な対応を質問(複数回答可)。最多だった「国会議員、地方議員の意識の改革」(70・4%)に次いで「被買収者の辞職」が60・0%に上った。自由記述欄には司法での処罰を求める意見が目立った。

 「必ず法で裁かれるべきだ。見逃せば、悪い根が広島の政界に残ってしまう」(三原市議)

 「買収の金を受け取ったら職を失うという罰によってでしか議員の意識は変えられないのではないか」(東広島市議)

 「被買収者が議員に居座ったり、次の選挙でみそぎが終わったとしたりすることにも大いに問題がある」(大竹市議)

 検察の姿勢には、過去に被買収罪で処罰された県民からも疑問の声が出ている。8年前、三原市の離島・佐木島を揺るがした買収事件。罰金刑を受けた同島在住の70代男性は憤る。

 当時、地域の区長だった男性は、13年4月の同市議選に島内から立候補予定だった市議(当時)に手伝いを頼まれ、現金40万円入りの封筒を渡された。選挙を手伝った経験はなく「政治家はこうやってカネを渡すんかのう」と思ったという。ポスター貼りなどで本土に赴く際の「船賃」として受け取った。

 ▽処罰に不公平感

 一晩預かり、「やはりまずい金だ」と思って市議に返した。選挙後、県警が本格捜査に乗り出し、男性も聴取を受けた。すぐに返金したことを訴えたが、被買収罪は現金を受け取った時点で成立する。捜査員からは「1日預かっただけでも買収」と言われたという。

 検察は公選法違反(被買収)の罪で男性を略式起訴した。男性は罰金20万円を払い、5年間の公民権停止になった。一方で、今回の大規模買収事件では、200万円を受領した県議や、受け取った金を遊興費や生活費に使った広島市議らは処罰を受けていない。

 「わしはすぐに現金を返したが、罰せられた。今回の事件で(被買収の)議員の多くが辞めず、おとがめなしでいられるのはなぜか。本当に納得できん」。処罰の公平性に男性は疑問を感じている。(敬称・呼称略)=第5部おわり

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