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同性婚否定は「違憲」 多様な家族、認める国に

2021/3/18 6:56

 同性同士の結婚が認められないのは憲法が保障する婚姻の自由などに反するとして、北海道の同性カップル3組が国に損害賠償を求めた訴訟で、札幌地裁が「違憲」の初判断を示した。

 賠償請求は棄却したものの、多様化する家族の実情や社会の意識変化を踏まえ、性的少数者の人権を重んじた司法判断と言えよう。

 同性カップルは法的に婚姻関係が認められておらず、税の控除や相続が受けられない、手術の際に同意できないといったさまざまな不利益を被っている。国は司法に指摘された「違憲」の現状を放置することなく、法整備に向け、国会での幅広い議論を急がねばならない。

 原告の男性カップル2組と女性カップル1組は2019年に婚姻届を提出したが、受理されなかった。そのため、同性婚を認めない民法や戸籍法は、憲法違反だとして提訴していた。

 武部知子裁判長は判決で、人が人に対して魅力を感じる「性的指向」は「人の意思によって選択・変更し得るものではない」と指摘。「同性愛者に婚姻による法的保障の一部すら与えないのは差別的で、法の下の平等を定めた憲法14条に反する」と踏み込んだ。

 原告側は「婚姻は両性の合意のみに基づく」との憲法24条についても、両者の自由で平等な合意で婚姻が成立するとしたもので、同性同士の結婚を禁止していないと主張してきた。これに対し、国側は「両性」は男性と女性を意味し、「夫婦が子を産み育てながら共同生活を送るという関係に法的保護を与えるためで合理的」などと訴えを退けるよう求めていた。

 菅義偉首相はこれまで、同性婚について「家族の在り方の根幹に関わる問題で、慎重な議論が必要」と繰り返してきた。実際、高年齢層では否定的意見が根強いそうだ。明治から昭和にかけて、同性愛は治療すべきものとされ、社会道徳に反すると教えられてきたことなども背景にあるのだろう。

 しかし、同性婚に否定的な意見や価値観を持つ国民がいるからといって、同性カップルの人権が損なわれてはなるまい。

 単身世帯が増え、子どもを持たない選択をする夫婦も少なくない。時代と共に家族の形や価値観は大きく変わっている。同性同士というだけで、婚姻制度の法的保護の枠組みから排除することは差別に当たる―。そんな判決の指摘には多くの人が納得できるのではないか。

 自治体単位では、同性カップルを婚姻に相当する関係と認める「パートナーシップ制度」の導入が進んでいる。15年に東京都渋谷区と世田谷区が取り入れて以来、全国へ広がる。ことし1月からは広島市でも始まった。支援団体の調べでは、すでに70余りの自治体が導入し、今後も増える見通しという。だが国の制度ではなく、法的には権利が保障されない。

 厚生労働省が18年に既婚女性を対象に実施した調査では、同性婚を法律で認めるべきだとした人が約7割を占め、30代以下では約9割が賛成している。性的少数者の権利を重んじる意識は高まっている。

 誰もが自分らしく生きられる社会へ、多様な家族が重んじられる必要がある。国は早急に議論を始めるべきだ。

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