コラム・連載・特集

緊急事態宣言、解除へ リバウンド対策万全に

2021/3/21 6:04

 新型コロナウイルス対策で政府の出していた緊急事態宣言が21日までの期限通り、残っていた首都圏の1都3県で解かれる。約2カ月半に及んだ宣言はこれで全面解除となるものの、事態が好転したわけではない。

 菅義偉首相は解除を決めた理由として、1都3県で新規感染者数や病床使用率が「目安とした基準を満たした」ことを挙げた。現実には、首都圏の新規感染者数は下げ止まり、微増に転じた東京では、連日300人を超えている。

 宣言再延長の際、菅首相は解除の条件を「ベクトルが下に行くことが大事」としていた。判断基準が一貫性を欠いていると言わざるを得ない。

 漫然と延長しても、これ以上の効果は見込めないというのが政府側の本音ではないか。その点では、発令中に複数の与党議員が深夜飲酒などに及び、「伝家の宝刀」である宣言の切れ味を鈍らせた責任は重い。

 手詰まりの宣言に代わる手段が、いかんせん首相の記者会見からはうかがえなかった。

 目下の問題は、リバウンド(感染再拡大)の兆しが見え始めていることである。

 東京の新規感染者数は再びステージ3(感染急増)に迫り、リバウンドが既に始まっているとの見方さえ、専門家の間で聞こえる。宣言が先行解除された近畿圏でも、感染者数が増加傾向に転じている。宮城県では、1日当たりの新規感染者数が過去最多を更新した。

 全国計でも千人台が続いており、昨年夏の第2波の水準である。宣言下に準じた状況と受け止め、政府は「第4波」に万全の備えを急ぐべきだ。

 これからの時期は、花見や卒業・入学祝い、歓送迎会といった春のイベントも多くなる。宣言の解除も重なり、会食の機会も人出も増えていく。

 本来なら、宣言解除は「ブレーキ」解除を意味するはずだった。感染の落ち着いている地域にすれば、「アクセル」に踏み換えたい段階だろう。

 きのう全国知事会は国への緊急提言案を示し、検査強化などリバウンド対策に併せ、観光支援事業「Go To トラベル」の段階的再開を盛り込んだ。無理からぬ要請といえる。

 とはいえ気の緩みは、リバウンドを助長する。「自粛疲れ」ムードを引き締めつつ、経済の持続を図る必要がある。それだけに自治体には以前にも増して、科学的データに裏打ちされたメッセージが望まれよう。

 重症化や発症を防ぐ効果を期待されるワクチンの接種が、2月に医療従事者から始まっている。ただ、接種の長期化は避けられそうにない。その後に続く高齢者や基礎疾患のある人、それ以外の市民に対する接種のスケジュールが具体的に示されていないからである。

 ワクチン供給のどこで目詰まりが生じているのか。それを見極め、早く手を打ち、接種のペースを上げてもらいたい。

 2020年4月に最初の緊急事態宣言が出てから、間もなく1年になる。

 昨夏の「第2波」でも昨冬の「第3波」でも、医療逼迫(ひっぱく)の危機にさらされた。これ以上、繰り返す愚は避けたい。国と自治体との役割分担や保健所業務の負担など、宣言発令の効果と課題の検証が急がれる。

  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

社説の最新記事
一覧