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2年分の花見

2021/3/23 7:09

 勝ち負けの話ではないと分かっていても、ちょっと悔しい。きのう福岡市や東京都内のソメイヨシノが満開になった。開花は広島市が全国で最も早かったのに、なんでまた逆転を許したのだろう▲もちろん花に罪はない。接ぎ木や挿し木でしか増えないソメイヨシノはそもそも、全国どの木も遺伝子配列が全く同じクローンなのだ。気象や土壌の条件が同じなら、示し合わせたかのように一斉に咲き、一斉に散る▲その見頃に合わせ、公園や川土手の名所は例年どこも陣取り合戦が熱を帯びる。しかもこの春は、自粛した昨年の分も含めて花見酒も弁当も2年分だと、妙に気がせくご同輩が多いかもしれない▲だからといって、飲んで騒いでとはいくまい。何しろ新型コロナは今やクローンとは対極の変異型が幾つも現れている。感染力が従来型よりはるかに強そうだと聞けば、「花黙(かもく)」とでも言うべき寡黙の花見がよさそう▲やぼついでに言えば、地球温暖化がさらに進むと開花は逆に遅くなったり、咲かなくなったりするらしい。花芽を伸ばす「休眠打破」には冬の寒さが必要なため。環境に強い変異株の出現を期待したくもなるが、地球を大切にすることこそ先決か。 

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