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LINEと個人情報管理 社会インフラの自覚を

2021/3/25 6:33

 無料通信アプリのLINE(ライン)で個人情報の管理に問題があることが分かった。運営会社のLINEは情報の漏えいは確認していないものの、利用者に十分な説明をしないまま海外から閲覧可能になっていたほか、海外のサーバーで画像などを保管しているという。ずさんとしか言いようがない。

 出沢剛社長はおととい記者会見し「信頼を裏切ることになったことを重く受け止めている」と謝罪した。東日本大震災を機に開発されたLINEも今は約900の自治体をはじめ、中央省庁や政党なども活用し、個人同士の交流アプリの枠を超えた社会インフラになりつつある。今後はその自覚を持って、信頼回復に努めてもらいたい。

 問題の一つは、日本国内のサーバーに保管された利用者の名前などの情報が委託先の中国の関連会社から閲覧可能な状態になっていたことだ。さらに韓国内にあるサーバーでは、メッセージをやりとりする「トーク」機能で投稿された画像や動画を保管している。韓国内のサーバーにはオンライン診療の健康保険証などが含まれていた。

 中国からは2018年から2年以上閲覧可能で、実際にアクセスした形跡もある。現行の個人情報保護法は海外からの閲覧を認めており、LINE側は法的な問題はないというが、利用者向け指針には「第三国」としかない。これでは説明不足と言われても仕方があるまい。

 国家情報法に基づき中国政府は民間企業や個人に諜報(ちょうほう)活動を義務付けている。むろん簡単にデータを読み取れる仕組みではないだろうが、悪意と高度な技術をもってすれば吸い上げられるリスクは捨てきれない。

 出沢社長はおとといの会見で、中国からの個人情報へのアクセスを完全に遮断し、韓国内で保管しているデータは全て日本国内に移転すると述べた。自治体の間でLINEの利用停止が相次いでいるほか、自民党内からは安全保障の観点から厳しい視線が注がれている。事実上の社会インフラと化している現実からすれば当然だろう。

 企業体質にも問題がありはしないか。17日の一部報道に対してウェブサイトでの資料提供で済まそうとした節もあるが、政府の個人情報保護委員会が報告を求めるなど反響が広がり、やっと会見に及んだようだ。

 LINE側にしてみれば「グローバル企業」が国境を越えてビジネス拠点を置くことは当たり前なのだろうが、扱っているのは個人情報である。出沢社長が「配慮に欠けていた」と述べた通り、子どもから高齢者まで層の厚い利用者の受け止めを見誤ったのではなかろうか。

 LINEはスマートフォンの普及を追い風に、10年で急成長した。今月初めにはヤフーの親会社Zホールディングスと経営統合し、多様なサービスを包括的に提供する「スーパーアプリ」の開発・普及を目指している。日本のIT業界の雄として責任はより重くなるはずだ。

 個人情報を利用する企業の責任を重くする改正個人情報保護法が昨年6月に成立した。望まない形で自分の情報を使われないよう、企業に求める権利が強化される。私たちも個人情報が正しく扱われているかどうか、より敏感にならなければなるまい。

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