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スエズ運河、座礁船を動かせ

2021/3/29 6:44

 旅番組を31年続けた兼高かおるさんは自称「土木工事大好き人間」。中東の首長から油田の権利を譲られる有名人だったが、油田より運河がお好きだったか▲著書「私の愛する憩いの地」ではフランスのミディ運河の旅を回想している。ある徴税吏が私財を投じ、内陸から地中海へ240キロに及ぶ航路をうがった。ボルドーのワインも運河の恵みだとか。観光船に乗った兼高さんは「船がゆっくり進むのは運河の岸を波でけずらないためでもあります」と感心していた▲この運河は19世紀には鉄道に役目を譲るが、スエズ運河は昨年も2万隻の船が往来した。それだけに、航路をふさぐ座礁は一大事だ▲辺りは砂嵐や強風が吹き、のどかなミディ運河とはまるで違う。埋もれた船首付近を浚渫(しゅんせつ)し、荷も軽くし、満潮に合わせて船を動かす―。これがエジプト運河庁のもくろみ。小欄が読まれる頃には吉報が届くといいが、長引けば原油はもちろん、自動車の輸送なども荒波を受ける▲かつて日本の建設会社は第3次中東戦争にも気後れせず、この運河の改修で固い岩盤と格闘した。今回は幸い、平和裏の「作戦」であり、各国も支援を申し出た。天の旅人もきっと見つめている。

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