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黄砂とペルシャのバラ

2021/3/30 6:04

 大陸から黄砂が飛んでくると思い出す。中国・タクラマカン砂漠の周辺に自生するバラを探した20年前の取材を。黄色い「ロサ・ペルシカ」は、ウルムチ郊外の木材加工場裏手の石炭カス捨て場だった寂しい空き地に、人目を避けるように咲いていた▲ペルシャ原産とされ、アフガニスタンやウズベキスタンにも分布する。シルクロードを行き来したキャラバン隊の交易品だったのか、それともラクダの背からたまたま種子がこぼれ落ち…。悠久の歴史に想像は膨らむ▲あるいは砂漠から舞い上がった砂とともに風に乗り、はるばる西から東へと運ばれたのかもしれない。きのう空も山も薄茶色にかすんだ広島市内にいると、偏西風の仲立ち説も有力に思えてきた▲私たちだけでは到底たどり着けない「砂漠に咲くバラ」の群生地に案内してくれたのはウルムチ市の若手職員。漢族のエリート官僚と思われる。市街地を囲む山を見て、大きなことを言った。「水を循環させ、植林し、緑の山に変えてみせます」と▲あの日、それだけ言い残すと彼は慌てて職場に戻っていった。大事業は着手できただろうか。黄砂が激しくなった今は「砂漠の緑化」も唱えていそうな気がする。

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