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ウイグル族への弾圧 人権外交、日本も強めよ

2021/4/2 6:42

 新疆ウイグル自治区の少数民族ウイグル族に対する中国政府の迫害を巡り、米国務省は2020年版の人権報告書で国際法に反する「ジェノサイド(民族大量虐殺)」だと非難した。それには一集団の破壊や精神的な迫害も含まれる。ウイグル族を取り巻く現実は危機的だ。

 新疆ウイグル自治区は1955年に成立した。自治区とはいえ、中国政府は漢族の大量入植によって文化や言語を「同化」させる政策を取ってきた。分離・独立の動きは厳しく取り締まり、09年には数万人規模の暴動が起きたほか、13年には北京の天安門広場でウイグル族が乗った車の突入事件も起きた。

 暴力は容認できない。だが根底に同化政策や経済格差への不満があることは否めない。

 米国務省の人権報告書では100万人以上のウイグル族が強制収容され、不妊手術や強制労働を強いられていると指摘している。ほかに200万人が「再教育」訓練を受けさせられたとしており、自治区にウイグル族が約800万人暮らすことを考えると、一民族を消滅の危機に追い込む迫害といえよう。

 国際社会の動きはようやく明確になってきた。欧州連合(EU)は先月、自治区の人権侵害に関与したとして中国当局者4人と1団体にEU渡航禁止と資産凍結の制裁を発動した。

 前身の欧州共同体(EC)時代に起きた天安門事件以来の制裁措置である。EUは中国との間で投資協定を準備しているが、それでも人権問題を重視する姿勢を見せた。外国の個人や団体に制裁を科す「グローバル人権制裁制度」を昨年12月に導入したことも背景にあろう。民主主義を基軸とした欧州の世論が示した見識ではないか。

 EUに続いて米英とカナダも制裁に踏み切った。先進7カ国(G7)では日本以外が足並みをそろえた形で、国際人権団体が「前例のない協調行動」と評価したのもうなずけよう。

 これに対し中国も報復措置に動いている。新疆産綿花の使用停止を表明していたスウェーデン衣料品大手H&Mに対し、中国共産党系の団体やメディアは不買運動をあおっている。矛先は日本のユニクロなどにも向いているが、強制労働などの手段による生産物に厳しい目を向けるのは国際社会の常識だ。

 国連のグテレス事務総長は、人権高等弁務官が率いる国連の視察団を受け入れるよう、中国政府に要請している。習近平指導部は外資系企業に圧力をかけたり、人権侵害を報道する英BBCなどのメディアに圧力をかけたりする行いを直ちにやめ、視察団を受け入れるべきだ。

 日本の外交当局も強いメッセージを伝えなければなるまい。日本には人権侵害を理由に制裁を科す法律の規定がない。

 このため、超党派の国会議員連盟の発起人会や自民党人権外交プロジェクトチーム(PT)などが相次いで動きだし、法整備や国会決議などを目指している。ミャンマーの国連大使が国軍の蛮行に対する日本の果たす役割を強調したように、日本に暮らすウイグル族からも期待するところは大きいようだ。

 茂木敏充外相は先日、ミャンマー国軍の弾圧を強く非難する談話を出している。アジア有数の民主国家がウイグルの問題を傍観するのは許されない。

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