男女格差報告 「政治の風景」変えねば
日本の男女平等の取り組みは世界から取り残されていることがまた浮き彫りになった。
156カ国が対象の「男女格差報告」(ジェンダー・ギャップ指数)で120位だった。おととし12月公表の前回、121位だったこともあり、政府は格差解消の施策を掲げてきたはずだが、最低水準に低迷する状況は変わっていない。
世界経済フォーラムが各国の女性の地位を、経済、教育、健康、政治の4分野で分析し、順位付けした。日本は今回、全4分野で順位を下げたという。
顧みれば、国内では女性への差別的な言動が相次いできた。医学部入試での差別や政治家らの蔑視発言などが、その都度、問題視されてきた。改善や意識改革が叫ばれながら、日本社会はなぜ変われないのか。
政治が責任を持って、社会の変革を進めるべきだろう。というのも、女性の参画が遅れている政治分野が147位と際立って低いためである。この順位は、政治参画をはじめ、女性の社会的な活動を奨励しないイスラム教の国々と変わらない。
現在、衆議院で女性議員の割合は約10%にすぎない。
2018年には「政治分野の男女共同参画推進法」が成立している。男女の候補者数をできる限り均等にするよう、政党に求めたものだ。19年の参院選で、野党がこの法律の趣旨を踏まえて擁立したことで、全候補者に占める女性の割合が28%に上った。自民党は14・6%、公明党は8・3%にとどまった。
努力義務であるのをいいことに、法の趣旨を軽んじてはいないか。与野党とも真剣に取り組む必要がある。
政府は昨年末、第5次男女共同参画基本計画で目標値を掲げた。国政選挙では、候補者に占める女性の割合を25年までに35%にするという。
ところが、共同通信が行った全女性国会議員へのアンケートで、この目標達成は「困難」と回答者の66%が答えた。
背景として、「政治は男性のもの」とする固定観念など女性の立候補や活動に壁がある―とする議員が多かった。家庭や子育てとの両立も障壁として挙がり、「強制力のある制度が導入されない限り困難」と指摘する声がある。
女性議員を増やす策として、「クオータ制導入」を7割が挙げた。候補者の一定比率を女性に割り当てる制度で130カ国以上が導入し、国会議員に占める女性の割合を高めている。
スウェーデンやノルウェーは1980年代に30%を達成し、現在は40%以上。80年代まで日本とほぼ同水準だった英国は約30%、フランスは約40%だ。
この秋までに衆院選がある。日本もクオータ制の導入など具体策が必要ではないか。政治に携わる女性が増えれば、経済分野で女性がリーダーシップを取る機運向上にもつながる。
東京五輪を巡り、性差や容姿に関する差別的な言動が報じられ、日本は「人権意識が低く女性差別的な国」だというイメージが世界に広まった。男性にジェンダー視点を持たせる教育も不可欠である。
男女平等へ、まず「政治の風景」を変えねばならない。政党はもちろん、女性が立候補しやすい環境づくりなど、私たち有権者の意識改革も求められる。
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