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おしんの「しん」は…

2021/4/7 6:51

 脚本家の橋田寿賀子さんが帰らぬ人となった。広島市内の図書館で蔵書検索パソコンにその名を打ち込むと、中国式の書名らしき「阿信」がずらずら並ぶ。ハングルもある。NHKの連続テレビ小説「おしん」である▲史上最高の平均視聴率52%をたたき出した代表作は、アジアや中東でも喝采を浴びた。貧しくてもけなげに、そして勤勉に生きる。主人公おしんの「しん」は、てっきり辛抱の「辛」と思っていた。どうも違うらしい▲著書の何冊かに繰り返し、「貧乏物語、辛抱物語の修身ドラマではない」と出てくる。むしろ「芯」の意味を込めたのではないか。生きる上で背骨となるような考え方である▲橋田さんには、非戦の思いが太い芯だった。終戦の時は20歳で戦争一色の青春。大河ドラマ「おんな太閤記」など200を超す作品を書いたが、人をあやめる場面は生涯書かなかった。とはいうものの、テレビ桟敷のこちら側に回った晩年、話は別だったようだ。刑事ドラマ「相棒」がお気に入りだったと聞く▲「おしん」人気は海を越え、人心をつかんだ。政治家の演説など比ではない。隣国とぎくしゃくした関係が続く今、共感しあえた時代がしのばれる。

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