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「どう喝問題」で関係にきしみ 広島県安芸高田市長と市議会

2021/4/11

 中国山地にある人口約2万8千人の広島県安芸高田市は、石丸伸二市長が2人目の副市長を全国公募したのをきっかけに注目が集まった。しかし、議会(定数16)は副市長人事案を否決。石丸市長が再提案の意思を示す一方で、議会サイドでは「もう終わった話」との声も上がる。「地方自治の両輪」であるはずの両者の関係が、なぜこうも、こじれてしまったのか。これまでの発言を整理する。

始まりはツイッター

 2020年8月の選挙で初当選した石丸市長。発端は、自身が9月25日に配信したツイッターだ。本会議中にいびきをかいて居眠りしていた議員に対し「緊張感が足りない」とつぶやいた。10月1日には「議会から異例の呼び出しを受けた。議会の批判をするな。敵に回すなら政策に反対するぞ」とどう喝を受けたとする続報を配信した。
 当時議長だった山本優氏は中国新聞の取材に「そうした趣旨の発言はあった」と事実関係を認めた上で、「脅すような言い方ではなかった」と説明している。

回答書に「意味なし」

 市議会は10月末、どう喝への見解をまとめた回答書を石丸市長に提出した。「威圧的と感じる発言はなかった」と結論付ける内容。どう喝したとされる議員も「優しい言葉で議会の現状を伝えたつもり」と反論した。
 これに対し、石丸市長は「私はどう喝されたと思っている。この回答書は意味をなさない」と不快感をあらわに。前議長の山本氏は「議会が市長に対立姿勢を示したことはなく、困惑している」と、関係に亀裂が入っていることを認めた。

一般質問を拒否

 11月の市議会議員の改選後も混乱は続いた。石丸市長は21年1月29日の全員協議会で再びどう喝問題を取り上げようとしたが、議会側はこれを認めなかった。石丸市長が途中退席する異例の事態となり、報道陣の前で「都合が悪いことは聞かない議会と相対することはできない」と痛烈に批判した。
 議長に就いた宍戸邦夫氏は回答書の内容は「議会の総意」だと説明。石丸市長は、この問題について対話する意思のない議員に対し「定例会の一般質問には答えられない」と強硬姿勢を打ち出した。
 「市長はなんで答弁せんのや」「どちらも意地を張っている」。3月3日の定例会閉会後、傍聴席の市民が石丸市長に怒号と落胆の声を浴びせた。「私は対話しましょうと言い続けたが、誰からも回答がなかった」。石丸市長は議場にとどまり、「最善を尽くしている」と強調。傍聴席とのやりとりは8分に及んだ。

副市長人事にも飛び火

 2人目の副市長は、1月にインターネットで全国公募。すると広島県内や首都圏、関西圏などから4115人が名乗り出た。
 選考の結果、一般社団法人RCF(東京)職員の四登(しのぼり)夏希氏(34)が内定したが、議員の一部からは「どんな人か分からず、責任が持てない」「市のことを知らない人がどうやっていくか不安」と切り捨て、3月の定例会で人事案を否決した。
 これに対し「荒唐無稽」と石丸市長。「否決されるのはよほどの理由が必要だが、それが見当たらない。開いた口がふさがらない」と批判した。
 副市長2人体制を巡っては、議会側も20年6月の本会議で関連の条例改正案を可決しており、いわば当事者といえる。それだけに今回の否決は、石丸市長に対する「不信任」と受け止められなくもない。

再提案に意欲

 石丸市長は副市長人事の再提案のタイムリミットを「4月いっぱい」と見据える。3月28日にあった市民との意見交換会でも「再提案し、四登さんに来てもらう姿を早く見せる必要がある」と訴えた。
 ただ、現在も市議会に対し反対理由の詳細を尋ねる機会を求めているが、議会側は「本会議で議論は終わっている」と応じていない。また、「どう喝した」とされる議員は同29日に記者会見。当日のやりとりの音声データを示し、該当する「発言はなかった」とした。
 残る1カ月、石丸市長は市議会に対し、政治家としてどう立ち居ふるまうのか。引き続きウオッチングする。(中国新聞デジタルチーム)

石丸伸二市長と市議会のやりとり【図】

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