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コロナ解雇10万人 生活支援、拡充が急務だ

2021/4/10 6:38

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で経済が落ち込み、解雇や雇い止めされた人が10万人を超えた。昨年8月に5万人を超えてから、わずか半年で倍増した。極めて深刻な事態だ。

 製造業の2万2112人を筆頭に、小売業、飲食業、宿泊業と苦戦が続く業種が目立つ。うち半数近くの4万6687人は非正規労働者だ。弱い立場の人たちがコロナ禍の影響をもろにかぶっている。看過できない。

 しかも、この人数は全国の労働局に寄せられたデータの推計値にすぎない。実際の人数はもっと多いとの指摘もある。例えば野村総合研究所の推計では、シフト制の勤務時間が半分以下になったのに休業手当を受け取っていない「実質的失業者」は女性が103万人、男性も43万人に上る、という。

 コロナ禍で職を失い、貯金を取り崩すなど、生活に困窮している人も増えている。政府は、そうした人たちへの支援策の拡充を急がなければならない。併せて、働く場を新たに見つけられるようサポート態勢を一層充実させる必要がある。

 生活保護というセーフティーネットがある、と政府は言う。しかし受給世帯数は昨年4月こそ急増したが、その後はほぼ変わっていない。必要な人の助けにはなっているのだろうか。

 申請すると、援助できないか親族に確認が行く「扶養照会」がネックになっている。政府は最近やっと、「身内に知られたくない」という心理的障壁を軽減するよう弾力的運用にかじを切った。当然だろう。現場への徹底を図ってもらいたい。

 事業者が解雇した人に払う休業手当の一部を国が補う雇用調整助成金は5月以降、特例措置が段階的に縮小される。雇用保険財政が逼迫(ひっぱく)しているためと政府は説明するが、これでは、職を失った人は守れない。特例措置の継続が必要である。

 複雑と言われる申請手続きをまず簡素化し、事業主が労働者に失業手当を払った後でしか申請できない仕組みも、改めなければならない。手持ち資金に窮した事業主は申請できず、結局は離職者がお金をもらえないことになるからだ。

 新たに働く場を確保できるような支援も欠かせない。政府は2月、休業中の社員を雇用関係を維持しつつ、人手不足に悩む他の企業に送り出す「在籍型出向支援」制度を創設した。民間は既に同様の取り組みを先行させている。例えば日本航空は、グループ外の企業や自治体に出向形式で1日当たり約1400人の職員を派遣しているという。効果があるなら、政府として制度拡大を検討することが求められる。

 休業や失業で収入が減った人への少額貸付制度や、学費を稼げなくなった学生への支援緊急給付金などもある。支援メニューを分かりやすく離職者に伝える努力も急がれる。

 新型コロナ感染の「第4波」が本格化しつつある中、感染力の強い英国型の変異種も広がっている。政府はきのう、東京都、京都府、沖縄県を「まん延防止等重点措置」に加えることを決めた。

 飲食店への営業時間短縮の要請などが広がっていけば、解雇される人も増えかねない。歯止めをかける施策が、政府には求められる。 

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