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グリーンランドの見識

2021/4/10 6:38

 「キドカラー」を知る読者は前回の東京五輪の記憶もおありだろう。キドは希土と輝度の掛け言葉。ブラウン管に「希土類」を使い、画面を明るく見せる日立製テレビのうたい文句だった▲「レアアース」の方が今は通りがいい。電気自動車のモーターに、風力発電のタービンに。脱炭素技術の決め手であり、原油や鉄鉱石より価値のある資源だろう。どの国も、のどから手が出るほど欲しい。国内に鉱床を持つ米中の競争も激しくなる▲そこへにわかに、未開の鉱床を持つ極北の島が表舞台に。デンマーク領グリーンランドである。先日の総選挙で最大野党イヌイット友愛党が勝利した▲独立のために外資の採掘を認めるのが与党。これに対し、採掘は環境汚染をもたらす―と最大野党は訴えていた。人口の9割は先住民の流れをくむ人たち。恐らくは米国の先住民がウラン採掘によって健康をむしばまれた受難を知っているのだろう▲<私たちはここまで速く歩き過ぎてしまい、心を置き去りにして来てしまった>。写真家星野道夫さんが極北を旅して遺(のこ)した言葉である。脱炭素のために逆にしいたげられる土地が生まれる。それでいいのか、心の目を見開いて考える。

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