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高齢者のワクチン接種 混乱招かぬ情報提供を

2021/4/13 6:35

 高齢者への新型コロナウイルスワクチンの接種がようやく始まった。

 65歳以上の3600万人が対象となり、日本の人口の3割近くに上る。高齢者は重症化したり死亡したりするリスクが高い。ワクチンには感染予防や重症者を減らす効果が確認されている。医療現場の負担軽減にもつながることが期待される。

 そして究極の目標は、接種を受けた人がウイルスへの免疫をつけ、それを強めることで社会全体で流行を抑え込んでいくことにある。

 とはいえワクチンが安全かどうか不安に感じている高齢者もいるだろう。これまで明らかになっている副反応などの情報について、正確な分析と丁寧な説明が求められる。

 政府は接種を担う市区町村や医療機関と連携を強め、安心して接種できる体制を整える必要がある。

 ところが肝心のワクチン供給量が足りない。4月末までに配られるワクチンは140万人分しかなく、高齢者全体の4%足らずしかカバーできない。

 当面は一部の自治体で限定的に行われる。広島県内ではきのう、呉市が一部の高齢者施設で実施しただけだった。

 接種の開始スケジュールが二転三転したことも混乱に拍車を掛けている。当初は「3月下旬」としていた目標が「4月」に変更され、結局この時期までずれ込んだ。

 高齢者はおろか、先行した医療従事者480万人への接種もまだ完了していない。極めて少ない供給量しか確保できないのに、無理やり接種開始に踏み切る狙いが分からない。

 これでは、菅義偉政権による「やってる感」の演出と言われても仕方あるまい。

 数少ないワクチンを誰から接種するかといった悩ましい問題は自治体につけ回した格好だ。多くの自治体が4月中の集団接種を見送るなど、接種体制の見直しを余儀なくされている。

 広島市が福祉施設の入所者や入院患者、80歳以上から先行するなど、年齢や属性で優先度を付けたのも、少ない供給量のワクチンをどう生かすか腐心した結果だろう。

 政府は5月からワクチン供給が本格化し、6月末までに高齢者全員分のワクチンを確保できるとしている。だが具体的な供給日程は明らかにしていない。

 自治体側は、国から連絡を受けた配分量に基づき、接種会場や医療従事者の確保に当たったり住民から接種予約を受け付けたりする。

 予定通りにワクチンが届かなければ、接種計画の見直しを迫られる恐れもある。混乱を避けるため、政府のさらなる情報提供を求める声が自治体から上がるのも当然だろう。政府は甘い見通しを排し、正確な配分量を具体的に伝えるべきだ。

 6月末に高齢者へのワクチン接種が完了した後に、基礎疾患のある人から一般の人へ対象が広がる。接種期間の長期化は避けられないだろう。

 感染力の強い変異株の影響で、流行の第4波による死者数は第3波を上回るとの予測もある。政府が危機感を持ってワクチン確保に全力を挙げることはもちろん、私たちも感染防止意識を高く保ちマスク着用の徹底などを続ける必要がある。 

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