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「こども庁」構想 課題の洗い出しが先だ

2021/4/15 6:35

 子どもに関連する政策を一元化して担う「こども庁」創設に、菅義偉首相がにわかに意欲を示している。

 子ども関連施策の所管は厚生労働省や文部科学省など複数の省庁にわたっている。それをまとめれば、窓口が分かりやすくなったり手続きがスムーズになったりするかもしれない。

 しかしなぜ今「こども庁」創設なのか。唐突感が否めない。

 どんな課題を重視しているのか、具体的に示されていないからだ。中身の整理もしないまま組織の名称だけが独り歩きしかねない。これでは次期衆院選をにらんだ「選挙目当て」と言われても仕方あるまい。

 政府はこれまでも少子化対策をうたい、保育施設の拡充や現金給付といった施策を打ち出してきたが、なかなか問題解消の決定打にはなっていない。それは、組織が一元化していなかったためだろうか。

 従来の施策がなぜ思うような効果を上げられないのか、省庁間の連携にどんな支障があったのか、新組織創設の前に、検証すべきではないか。

 子どもに関する施策は、保育や教育、少子化対策、児童虐待防止など実に多岐にわたる。例えば就学前の子どもでは保育園が厚労省、幼稚園が文科省、認定こども園が内閣府の所管だ。法務省や警察庁などに及ぶ問題もあり、施策の決定に時間がかかるなど、行政の「縦割り」の弊害は長く指摘されてきた。

 医療、教育、福祉など、子どもに関わるあらゆる分野を一括して担う組織があれば、縦割りの弊害は解消されるだろう。

 しかし整理すべき課題は多い。例えば「こども庁」が担う年齢をどこで区切るのか。仮に未就学児とすれば、貧困や虐待の問題など、小学生以降も対応が必要なケースで分断が起き、新たな縦割りが生じるのではなかろうか。

 そもそも子ども施策の司令塔の創設は、旧民主党が先んじて訴えてきた内容である。一定の成果は上がったものの業界や省庁の抵抗があり、道半ばで終わっている。立憲民主党も旧国民民主党と合流する前の旧立民時代の選挙公約で「子ども家庭省」を明記していた。

 菅首相が意欲を示したのは今月1日、少子化対策に取り組む自民党の若手有志からの提言を受けてからだ。すぐに自民党に党総裁直属機関の設置を指示した。自民党は党内議論を始め、「こども庁」創設を、次期衆院選の目玉公約に据える方針だ。国民受けが期待でき、菅首相が目指す「縦割り打破」にも沿っているからだろう。

 菅政権はこれまでも「デジタル庁」創設を打ち出したほか、野党の提言を「丸のみ」する形で孤独問題解消を図る対策室や担当大臣を置くなどしてきた。

 行政改革をし、省庁が横断的に問題解決することは重要だが、それは新組織を創設するだけでは達成できまい。

 コロナ対策を見ていても、司令塔の担当大臣ばかりが増え、かえって複雑化し混乱しているように見える。

 国民が求めているのは、施策の実効性だ。自民党の二階俊博幹事長は「子どもは国の宝」と党内議論を加速させる考えを示した。ならば新組織ありきではなく、子どもを第一に考える視点から議論すべきだ。

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