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「押すな押すな」も曲がり角

2021/4/15 6:35

 景気のいい言葉というのがある。にぎわいなら「大にぎわい」としたくなるし、「ぎゅうぎゅう詰め」の方が満席よりも勢いがある…なんていうのはもう、古びた昭和の感覚なのだろう▲令和になってからの本紙をめくると、いやでも気付く。「押すな押すな」や「すし詰め」といった形容の文句は影が薄い。無理もあるまい。コロナ禍の昨今は、人だかりイコール密集、密接と敬して遠ざける方が多い▲集客力を競い合ってきた観光イベントも曲がり角を迎えている。広島湾の夏の風物詩、宮島水中花火大会が終止符を打つ。世界遺産の島の上空や水面(みなも)に咲いた「華」と影絵風の大鳥居は見ものだった▲始める理由は一つでも、やめる時はさまざまあるのが世の常である。それに歩みは半世紀近い。観光の魅力アップに一役買い、達成感もあるだろう。進むか、引くか。決断はずしりと重かったに違いない。ただ、サヨナラもなしにお別れとは寂しい▲多ければ多いほどよし。高度成長時代から引きずる、そんな価値観は薄れていきそうな気配である。とすると、次にもてはやされるのは何だろう。何事も「ほどほど」を旨としたという江戸の感覚に戻るのかもしれない。 

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