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ヤングケアラー初調査 いち早く発見、孤立防げ

2021/4/16 6:43

 家族の介護や幼いきょうだいの世話に追われる子ども「ヤングケアラー」の実態調査が全国で初めて行われた。公立中学校の2年生では5・7%、公立の全日制高校2年生では4・1%が該当するという。

 1クラスに1〜2人はいる計算になる。「夜遅くまで世話をして授業に集中できない」「誰かに相談する余裕なんてない」など、回答として寄せられた子どもの悩みは切実だ。

 厚生労働省と文部科学省の1月までの調査には、中学生5558人、高校生7407人がウェブで回答を寄せた。ただ、子どもの全体数からみればサンプルは1%にも満たない。家族の世話をする子どもたちが窮地に陥っている現状は一定にはうかがえるが、実態を把握するには十分とは言い難い。

 ヤングケアラーは「本来は大人が担うべき家事や家族の世話を日常に行っている18歳未満の子ども」などとされている。

 費やしている時間は1日あたり中学生は平均4時間、高校生は同3・8時間。7時間以上も1割余りいた。頻度は半数弱が「毎日」で、家族を支える負担が重く、休息や学習時間が奪われているのは明らかだ。これでは、進学など子どもたちの将来の選択肢も狭められてしまう。

 なのに、ヤングケアラーの6割以上が「誰にも相談したことがない」と答えている。自分が該当していることさえ知らないことも少なくないようだ。

 自分以外に「協力者」がいないヤングケアラーも1割いた。負担を1人で抱え込み、助けを求めることもできずに孤立している姿が浮かんでくる。看過できない。

 埼玉県はヤングケアラーを支援対象とする条例を昨春制定した。その調査では、子どもの悩みは「学習時間が十分に取れない」ことより「孤独を感じる」「ストレスを感じる」が倍近く多かった。勉強はもちろん、友だちと遊べず、クラブ活動もできないことで、社会との接点も失いがちになっていないか心配だ。心身の成育に重大な影響を及ぼすという指摘もある。

 今回の調査で半数近くの学校は「ヤングケアラーと思われる子どもがいる」と答えた。しかし、そのうち中学校37・9%、高校62・9%が「外部の支援につないでいない」としていた。

 子どもの状況を把握しているのに「厳しい家族環境なのに頑張っている感心な子ども」とでも評価しているのか。それでは何も改善しない。学校はもっと積極関与し、外部と連携しながら子どもに向き合ってほしい。

 法整備が進む英国ではヤングケアラーのほぼ半数がひとり親家庭という。日本ではまた、夫婦が共働きで家事が回らず、祖父母の介護を子どもが担わざるを得ない例もあるという。

 子どもや、その世話を受ける家族の実情に応じた対応ができるよう介護保険なども運用を柔軟にするべきだろう。学校だけでなく介護や医療などの現場が連携し、社会全体で子どものSOSを受け止めてほしい。

 概要をつかむだけのサンプル調査では個別対応につながらず不十分だ。中高生だけでなく、小学生の調査も必要だ。政府は子どもを支援するため全容の把握を進め、一刻も早く実効性のある対策を講じられるよう、取り組まなくてはならない。

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