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熊本地震5年 関連死ゼロへの備えを

2021/4/17 6:52

 熊本、大分両県で276人が犠牲になった熊本地震から5年になる。観測史上初めて最大震度7に連続して見舞われたことは衝撃だった。そのため最初の激震後に自宅へ帰り倒壊に巻き込まれた人も少なくない。

 インフラや住宅の再建は着実に進み、仮設住宅などの入居者はピーク時の1%である。「復興のシンボル」熊本城天守閣も復旧が終わった。熊本日日新聞のアンケートによると「復興を実感する」と回答した被災者は8割に上っている。災害の記憶を風化させず、検証していく段階に入ったのではないか。

 熊本地震の問題の一つは、いわゆる災害関連死の比率の高さである。両県で関連死と認定されたのは、死者の8割に当たる221人。熊本県の調査では死者の77%を70代以上が占め、87%に持病があったという。

 関連死の原因は地震のショックや「余震」への恐怖が最も多く避難所生活の負担、医療機関の機能停止による初期治療の遅れも挙げられる。被災者にもたらされた心身両面の激変が、持病悪化や自殺の誘因となったことを深刻に受け止めたい。

 熊本県によると、関連死に至る直前に被災者がいた場所は自宅が中心で、避難所はわずかだという。支援を要しながら、諸事情で自宅にとどまる高齢者の存在を忘れてはならない。

 熊本県では最近も災害公営住宅で、70代の「孤独死」が確認されている。地震から5年を経て訪問相談を担う自治体の「地域支え合いセンター」の閉所が相次いでいるが、平素から顔の見える関係を築く「見守り」は継続させる必要があろう。

 超高齢化社会が到来した災害列島・日本のリスクを思うと、熊本だけの問題ではあるまい。市町村によって関連死の認定率にばらつきがある問題も生じており、国の統一的な認定基準や財政支援も強く求めたい。

 熊本地震では「車中泊」を避難先に選んだ人が少なくなかった。熊本県益城町(ましきまち)では指定避難所の半数以上が被災したことにも一因があったという。いわゆるエコノミークラス症候群の懸念から一般には推奨されていないが、熊本県を含めて受け入れ態勢を整える動きもある。

 新型コロナウイルスの感染拡大を機に、避難所の密を避ける次善の策である。乳幼児連れなど、避難所で肩身の狭い思いをしがちな人たちへの配慮も必要だろう。あらかじめ車中泊ができる場所を設け、物資の支援や体調管理をしやすくする。

 在宅避難や車中泊を含めて「一人も取り残さない」という考え方が関連死をゼロへ近づけることにつながるだろう。

 熊本県の蒲島郁夫知事は熊本日日新聞の取材に対し「(巨大災害の初動では)自分たちだけで対応しようとする行政の『遠慮の文化』は不要」と述べている。活断層が縦横に走る日本列島では、ここに強い地震は起きない、自分は安全だ、という先入観は捨てたい。自治体は常に連携を意識すべきである。

 熊本地震では会員制交流サイト(SNS)を通じて、デマや誤報が拡散した。収束しないコロナの影に脅かされる時期にあっては、なおさら確かな情報が求められる。災害が起きた時の正しい判断と行動を、私たちは過去の災害から学んでいく必要もあろう。 

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