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トリチウムのゆるキャラ

2021/4/17 6:52

 ウサギが手をアルコール消毒し、サルは検温している。東京国立博物館のホームページに、コロナ対策を紹介するそんなイラストがあった。国宝「鳥獣人物戯画」の展覧会を開催中。絵巻の中の動物たちまで戦々恐々とは…▲漫画、アニメのルーツとされる絵巻。私たちは昔から身の回りの事物を生き物のように描いてきた。例えば草花や自動車。さらに風神雷神など空想の存在も親しみやすいキャラクターに。各地の「ゆるキャラ」もそう▲いわば伝統の表現手法は、最近の言葉でいう「キャラ化」か。物事をわかりやすく、柔らかく伝えるのにぴったり。福島第1原発にたまる処理水の海洋放出を決めた政府も作成した。処理水が含む放射性物質トリチウムのイラストである▲丸顔でかわいらしい目鼻のキャラ。雨水や海水、人間の体内にもあり、健康に影響はないとアピールする。しかし「ゆるキャラでごまかすな」と批判が相次いだ。漁民は「海に流したい国の気持ちが表れている」とも▲復興庁はデザインを改めるという。だが素っ気ないキャラにしたところで、風評被害に苦しめられる側にとっては大差あるまい。廃炉までの「絵巻」を描き直してはどうか。 

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