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デジタル化関連法案 個人情報の保護徹底を

2021/4/19 6:35

 菅義偉首相が看板政策に掲げるデジタル改革関連法案の国会審議が大詰めを迎えている。

 法律が成立すれば、個人情報の取り扱いに加え、国と地方の情報システムの在り方などが大きな変更を迫られる。

 国に一元的に権限を与えて個人情報を含むデータの利活用が加速されれば、個人情報の保護がないがしろにされたり、国の監視や統制が強まったりする懸念が拭えない。

 政府・与党は早期成立を目指しているようだが、国民の不安を置き去りにしたまま数の力で強引に押し通すことがあってはならない。

 関連法案は、デジタル庁の設置を含む新法案5本と個人情報保護法など約60本の改正案を束ねたもので、一括して審議するよう国会に求めている。

 首相をトップにしたデジタル庁を司令塔に、各省庁や自治体でばらばらだったシステムや個人情報保護のルールを共通化させていくことが柱だ。マイナンバーの利用拡大や押印が必要な手続きの削減なども進める。

 行政サービスの利便性向上に加え、民間企業のデータ利用を促し新ビジネス創出などにつなげていく狙いだという。

 ただ問題点も多い。最も懸念されるのは個人情報の保護だ。

 個人情報保護法改正案は、全国共通の情報保護ルールに一本化する。現在は、国や独立行政法人、民間企業を対象とする三つの法律と、地方自治体による多くの条例が乱立し、「2千個問題」と呼ばれている。

 政府は情報を取り扱う組織ごとに規定や運用が異なり、データのやりとりを阻害している障壁と問題視する。それらを「いったんリセット」(平井卓也デジタル改革担当相)する。

 データの共有が容易になれば感染症や災害対策などで国や自治体、民間企業の連携が円滑になることが期待されるという。だが自治体からは住民情報が漏えいするリスクが高まるとの指摘が相次ぐ。

 自治体は個人情報保護の取り組みで国に先行してきた。思想信条や病歴、犯罪被害などの「要配慮個人情報」の収集や記録について、9割以上の自治体が条例などで規制している。

 収集については原則禁止とする自治体が多いが、規制が緩い国のルールに組み込まれれば、プライバシー保護が後退する可能性は否定できない。

 政府は、既存の個人情報保護委員会の監視機能を高め、民間だけでなく省庁や行政機関が個人情報を適切に扱っているかを監視・監督させると強調する。

 しかし行政機関に「相当な理由」があれば、個人情報の目的外利用や提供ができる規定は残されたままだ。しかも保護委員会は行政機関に助言や勧告はできても、是正命令を出す権限を持たされていない。

 行政に個人データがより集中しやすくなれば、国民の監視・統制に結びつくのではないかという危惧も強まる。多様な個人データが悪用される恐れが拭えず、情報が漏えいした場合の被害や影響も計り知れない。

 国民の不安は当然で、現行の改正案では十分とはいえまい。自分の情報がどのように管理され、使われているかを知り、訂正や抹消を要求できる「自己情報コントロール権」を保障することなどを検討すべきだ。


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