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公務員65歳定年 今なぜ「官」優遇なのか

2021/4/21 6:41

 定年を段階的に65歳に引き上げる国家公務員法改正案が今国会に再提出された。

 少子高齢化の中で労働力人口は減り続けており、働き手の確保が難しくなっている。官民を問わず長く働き続けられる環境づくりは急務といえよう。

 政府は、官が主導して民間や自治体の定年延長を促す狙いを強調する。だが企業の8割超は依然として60歳定年としているのが現状だ。

 加えてコロナ禍で雇用の維持さえ難しくなっている事業所も多い。そんな中で公務員が民間を置き去りにする形で定年延長に踏み切れば、不公平感が生じる。「官優遇」と見られても仕方あるまい。

 疲弊した地域経済の立て直しなど、もっと優先すべき政策課題は他にもある。

 改正案は、一般職の国家公務員の定年を現在の60歳から65歳へ2030年度までに段階的に引き上げる。原則60歳になれば管理職から外れる役職定年制を導入し、60歳以降の給与は当面、それまでの7割とする。

 改正案はいったん昨年の通常国会に提出されたものの、検察幹部の役職定年を政府の裁量で延長できるようにする規定に世論の批判が高まり、廃案になった。裁量規定を削除したが、廃案に追い込まれた昨年の法案をほぼ踏襲している。

 問題は民間とのバランスだ。企業には65歳までの雇用確保が義務付けられているが、多くの企業は定年延長ではなく、いったん退職させる再雇用制度を採用。定年後の給与水準は大幅に下がるケースがほとんどだ。

 再雇用された60代前半男性の約4割は給与が定年前の半分にも満たないという民間調査結果もある。60歳時の7割の給与を「民間並み」とする人事院の主張とは大きな隔たりがある。

 公務員には現在でも再雇用とほぼ同じ再任用という制度がある。民間に比べて著しく不利があるわけではなく、定年延長に切り替える合理的な理由は見当たらない。

 役職定年も導入するが、管理職として引き続き勤務できる特例も設ける。民間を大きく上回るような待遇を公務員だけに担保すれば、国民の反発を招きかねない。

 定年を延長すれば、移行時には退職者が大幅に減り、総人件費が膨らむ課題も残る。加えて国家公務員法が改正されれば地方公務員法もそれに倣う。成立すれば、自治体職員の定年も引き上げられることになる。

 国はもとより、地方自治体も人口減少と景気低迷で税収が落ち込み、予算編成が硬直化している。定年延長による負担増で財政がさらに窮地に陥るのであればまさに本末転倒だ。

 改正案については、官公労が支持する野党第1党の立憲民主党なども成立に前向きの立場とされる。国民から幅広い理解を得るには、国会で十分な審議を尽くすのは当然だ。間近に迫る総選挙に向けた実績づくりに走るような党利党略は厳に慎むべきだ。

 完全週休2日制を社会に定着させたのは公務員への先行導入だったとされる。65歳定年も時代に合わせた法改正というならば、運用方針や賃金カーブの見直しなどを含めた制度設計もパッケージで示して議論する必要がある。

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