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岡江久美子さんとお別れの会

2021/4/23 6:31

 もう20年になる。沖縄でヒットした曲が全国区となり、今は海外でも歌い継がれているらしい。「涙(なだ)そうそう」。題名は島言葉で、涙がポロポロこぼれて止まらない様子をいう▲作詞を買って出た歌手の森山良子さんには、20代でこの世を去った兄が脳裏にあった。♪晴れ渡る日も雨の日も/浮かぶあの笑顔…。コロナ禍の今、涙の出番は限られる。最期をみとるのは肉親でもままならぬと聞く▲1年前、俳優岡江久美子さんがコロナ感染による肺炎で帰らぬ人となった。命日のきょう、お別れの会が営まれる。ファン向けに動画でも生配信されるそうだ▲娘で俳優の大和田美帆さんが、ネット上の日記に今月つづった一節は何とも痛々しい。〈心の置き所がなく、夢の中にいるよう〉だと。志村けんさんの家族と同様、みとれずじまいで再会した時には骨箱に納まっていた。「ありがとう」とつぶやけぬまま、心が宙づりなのだろう▲手を握り、体をさする。耳元で声を掛ける。懐かしい味に目配せし合う。対面の時間に焦がれる日々は、まだ当分続く気配である。岡江さんの会は、故人が生前に望んでいた音楽葬にするという。一体どんな曲が心を洗い流すのだろう。 

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