コラム・連載・特集

決別 金権政治

自民支持者も怒りの1票「勝たせてはいかん」【決別 金権政治】<第6部 民意の風>(1)

2021/4/26 23:24
自民党候補の落選が伝えられ、落胆の表情を浮かべる岸田文雄前党政調会長=中央(25日、広島市中区)

自民党候補の落選が伝えられ、落胆の表情を浮かべる岸田文雄前党政調会長=中央(25日、広島市中区)

 大規模買収事件で有罪が確定した河井案里(47)の当選無効に伴う参院広島選挙区の再選挙で、自民党が想定外の敗北を喫し、有権者の怒りの大きさを見せつけた。「政治とカネ」が問われた短期決戦でどんな地殻変動が起きていたのか。民意の風はどこから吹いたのか。現場から検証する。

 シリーズ【決別 金権政治】

 「最後まで悩んで投票した」。激戦から一夜明けた26日朝、自民党を長年支持してきた広島市安佐北区の70代男性は、野党が推す宮口治子(45)に投じた思いを明かした。「いくら清潔さを訴えても、今の自民党は信用できん。反省してもらいたい」

 安佐北区は、案里の夫で元自民党衆院議員の克行(58)=公判中=が地盤としていた衆院広島3区内にある。男性は衆院選のたびに克行へ投票。案里が自民党から出た2019年の参院選では案里のポスター30枚を張って回った。前首相の安倍晋三、現首相の菅義偉らが案里の応援で広島入りした。国政での活躍に期待し、1票は案里に投じた。

 ■「全てうやむや」

 案里は初当選を果たしたが、その後、一連の疑惑が発覚。河井夫妻は地方議員や後援会員らに計2901万円を配ったとして起訴された。党本部が計1億5千万円もの巨額資金を提供していたことも分かり、男性は憤りを覚えたという。

 克行は公判で買収資金の原資を「歳費などの手元資金だった」と説明したが、男性は「本当なのか、きっちり調べてほしい」と求める。1億5千万円に関する資料が検察当局に押収されたことを理由に説明責任を果たさない党本部の姿勢にも納得できないという。

 「全てがうやむや。国民がばかにされとる。今回だけは自民党を勝たせてはいかん」と男性。野党への投票には抵抗があり、無効票となる「白票」も考えたが、あえて宮口に投じた。

 有権者はどういう思いで1票を投じたのか。投票者に対する中国新聞社の出口調査では、投票先を決める際に最も重視した政策や争点として、回答者の4割強が「政治とカネ」の問題を挙げ、最も多かった。19年の参院選で案里に投票した人の4割弱が宮口に投票していた。

 ■「みそぎ」許さぬ

 「どうしても自民党にだけは入れたくなかった。私なりの反省なんです」。衆院広島3区内に住む80代男性も宮口に1票を入れた。

 男性は克行の後援会員で、克行から5万円を受け取った「被買収者」の一人。連日、検察庁から聴取され、選挙には二度と関わらないと決めた。

 一方で、同じ「被買収者」の地方議員の多くは辞職せず、一部は今回の再選挙で自民党候補の応援に動いていた。「政治家は本当に反省しとるのか。私には反省しているように思えない」と語気を強めた。

 「再選挙で自民党が勝てば、『みそぎ』が済んだことにするだろう。それだけは許せなかった」。森友、加計学園問題を引き合いに「『なかったこと』にされたくない」と強調した。

 自民党への逆風が吹き付けた半面、投票率は19年の参院選を11・06ポイント下回る33・61%。同選挙区では過去2番目に低かった。

 東広島市の自民党支持者の70代男性も「自民党に投票するのは道理が通らん」と考え、投票所へ足を運ばなかった一人だ。

 「自民党はおごりすぎた。事件後の対応もまずい」。1億5千万円や買収原資の問題を念頭に男性は言い切る。「再選挙で若い候補だけに謝らせるんじゃなく、安倍さんや菅さんが説明責任を果たさにゃいけん。それまで、わしは応援はできん」(敬称、呼称略)

 <クリック>参院選広島選挙区の大規模買収事件 検察当局によると、2019年7月の参院選広島選挙区で河井案里を当選させるため、夫の克行が同年3〜8月に地方議員や後援会員ら100人に計2901万円を渡したとされる。うち広島県議4人に計160万円を渡した案里については懲役1年4月、執行猶予5年の東京地裁判決が確定し、案里の当選は無効となった。

<第6部 民意の風>
(1)自民支持者も怒りの1票「勝たせてはいかん」
(2)県連が自民本部に恨み節 「陣営戦略ミス」指摘も
(3)被買収、処分なしに反感 「自民もけじめを」の声

  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

決別 金権政治の最新記事
一覧

  •  2019年夏の参院選で河井克行、案里夫妻が100人に計2901万円を配ったとされる買収事件では、選挙に絡んだお金のやり取りが浮き彫りとなりました。令和の時代も変わらない「金権選挙」。皆さんの地域でも耳にしたこと、目にしたことはありませんか。体験、情報、意見をぜひお寄せください。(中国新聞「決別 金権政治」取材班)

  • LINE公式アカウント

    LINE友だち登録またはQRコードから友だちになってトークをしてください

    専用フォーム

    こちらから投稿ください
  • 郵送

    〒730-8677
    広島市中区土橋町7-1
    中国新聞編集局
    「決別 金権政治」取材班

    ファクス

    中国新聞編集局
    「決別 金権政治」取材班
    082-236-2321

 あなたにおすすめの記事