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学術会議の声明 即時任命で違法解消を

2021/4/29 6:10

 日本学術会議の会員候補6人の任命について、菅義偉首相が理由も挙げずに拒否してから半年以上がたつ。いつまで、こんな状態を続けるつもりだろう。

 学術会議は先週、6人の即時任命と拒否理由の説明を要求する声明を総会でまとめた。

 任命拒否が明るみに出た昨年10月以降、理由説明などを求める要望書や問題解決を望む幹事会声明を繰り返してきたものの、政府側はまともに取り合っていない。総会声明という、一段と強い調子で迫った覚悟を受け止めねばならない。

 ところが、声明を受け取った井上信治科学技術担当相は「権限がないので、なるべく早く首相に伝える」と述べるにとどまった。全ては、菅首相の胸三寸にあると言いたいのだろう。

 6人は、安全保障関連法などで政府方針に異を唱えた法学者らである。加藤勝信官房長官は「手続きは終了している」と、拒否理由の説明に応じようとしない。国民に納得のいく理由を示さぬ限り、恣意(しい)的な介入と疑われても仕方あるまい。

 元学術会議会員で97歳の気象学者、増田善信さんが任命拒否の撤回を求め、約6万人分の署名を内閣府に提出した動機も、その危機感からだった。「人事介入で組織が変質し、戦時中のように研究者を政治に従わせる動きが加速してしまう」

 岡田正則早稲田大教授ら6人は今週、拒否理由を明らかにするよう、内閣府に自己情報の開示請求をした。人事やプライバシーを理由に政府が開示を拒む言い逃れは通用しない。正面から向き合う必要がある。

 この問題で、首相が金科玉条としてきたのは、公務員の選定や罷免を「国民固有の権利」とする憲法15条だ。特別職の国家公務員である学術会議会員についても、国民を代表する政府には「任命しない権限」があるかのように言い繕ってきた。

 憲法を持ち出すなら、内閣の職務を定める73条についてはどう考えるのだろう。「法律の定める基準」に従い、公務員に関する事務を担うよう規定する。日本学術会議法で定める会員の定員を満たさぬ現状は、違法状態である。欠員の解消は政府の責務にほかならない。

 憲法上の権利は、政府の横暴を食い止めるため国民に保障されたものだ。憲法23条にうたう学問の自由を曲げ、政府の権限を強めるためにあるのではない。立憲主義への理解を欠く姿勢まで、前政権から引き継いでいるのだろうか。

 今日に至るまで事態がこじれた要因の一つは、政府・自民党による論点のすり替えだろう。問題発覚後に政府は、学術会議の年間予算約10億円に疑問を挟み、組織の在り方見直しを打ち出した。党も呼応し、プロジェクトチームの提言で政府機関から外す改革案を投げ掛けた。

 学術会議は今回の声明に併せ、組織改革の検討結果も報告書にまとめた。法律で独立性が保障された現行の形態を「変える積極的な理由は見いだしにくい」と結論付けた。今後、組織の設置形態についてさらに検討を深め、会員の多様性や会員選考プロセスの透明性を確保していく姿勢も示している。

 政府には、学術会議の独立性を尊重し、政治介入はやめてもらいたい。一刻も早く、まず任命拒否を撤回すべきである。

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