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B型肝炎最高裁判決 全面的な救済、国は急げ

2021/4/30 6:32

 国の医療行政の過ちが生み出した被害者を、幅広く救済する道を切り開くといえよう。

 集団予防接種での注射器使い回しが原因のB型肝炎。20年以上前に発症、いったん沈静化し、後に再発した患者が国に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁が今週示した判断である。

 最大の争点は、賠償請求権が消滅する20年の「除斥期間」をどこから数えるかだった。最高裁は、国の主張する最初の発症時ではなく、再発した時とすべきだと判断した。二審の福岡高裁による原告敗訴の判決を破棄し、損害額を算定するため審理を福岡高裁に差し戻した。

 一定の時間がたてば、たとえ国に責任があっても補償の減額が許される―。そんな「時の壁」は、被害者の幅広い救済を阻んでおり、受け入れ難い。その「壁」を打ち破ろうとする最高裁の判断は、評価できる。

 同じような訴訟を広島や松江など全国の地裁で起こした再発患者は100人を超す。そうした人を救済するため、国は、除斥期間についての従来の方針を抜本的に転換する必要がある。

 B型肝炎は感染しても、自覚症状がなく、気付いていない人も多いとされる。放置すれば、肝硬変や肝がんに移行する恐れもあるという。

 そうした患者の実態も踏まえて最高裁は判断したのだろう。原告と同じ慢性B型肝炎の場合、最初の発症より再発の方がより病態の進行した「特異なもの」になることや、現在の医学では再発する理由が解明されていない点を指摘している。

 加えて、最初に発症した時点では、後の再発による損害の賠償を求めることは「不可能」だとまで言い切っている。

 補足意見はさらに踏み込んでいる。「迅速かつ全体的な解決を図るため、救済に当たる国の責務が適切に果たされることを期待する」。これほど強く、被害者の速やかな全面的な救済を国に求めるのは理由がある。

 集団予防接種が原因のB型肝炎を巡って、最高裁が国の責任を認める判決を出したのは、15年も前のことだからだ。

 危険性が指摘されていたにもかかわらず、乳幼児を対象にした集団接種の現場では、注射器の使い回しが続いた。安全対策をないがしろにしていた国が交換をやっと義務付けた1988年まで、約40年の間に多くの人がB型肝炎に感染した。45万人に上るとの推計もある。

 国は、責任が2006年の判決で明らかになってからも、おざなりな対応を続けた。その時の原告以外には救済措置を講じず、11年になってようやく、菅直人首相が患者らに謝罪した。全国訴訟原告団・弁護団と和解に向けた基本合意書を結び、翌12年には、救済のための特別措置法が施行される。裁判を起こして国と和解すれば、給付金を受け取れるようになった。

 それでも、除斥期間の問題が残された。発症から20年以上たって提訴した今回のような場合、給付金の額は、4分の1以下に抑えられてしまう。これでは幅広い救済とは程遠い。

 B型肝炎の患者を救済する仕組み自体を見直すべきである。今回の最高裁判決が、国に改めて突き付けた。本をただせば、医療行政の失態で生じた被害である。国の責任で全面的な救済を急がなければならない。


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