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米大統領の議会演説 中国との対話も模索を

2021/5/1 6:00

 米国は復活へ再び動きだしている―。バイデン大統領が施政方針演説で語り掛けた。

 巨額の財政出動による雇用創出をてこに国力を底上げするとともに、格差是正を進めるという。「大きな政府」への傾斜が明確になった。

 政権発足100日を翌日に控えての演説である。就任以来の新型コロナウイルスワクチン接種の実績や高い経済成長率といった成果もアピールした。

 力強いメッセージは米国内にだけ向けられたものではない。中国への対抗意識を鮮明にしている。内政、外交の両面で中国の名前を何度も挙げ、全面対決を打ち出す。トランプ前政権の「米国第一」主義をほうふつとさせる面もある。

 中国の軍拡政策や人権侵害などは国際社会にも批判や懸念が広がっている。米国がリーダーシップを取り、強い姿勢で臨むのは心強くもある。

 とはいえ、対決姿勢を鮮明にするあまり、安全保障や貿易などの面において世界の分断を深め、一触即発の危機を招くことがあってはならない。対話による解決を、日本など友好関係にある国々とともに探るべきだ。

 「専制主義が未来を勝ち取ることはない」。専制主義勢力に位置づける中国やロシアなどと闘い、21世紀を勝ち抜くと訴えた。その上で、国力増強が必要として、8年間のインフラ投資計画、10年間の格差是正策で、総額4兆ドル(約430兆円)もの二つの成長戦略を発表した。

 国民の生活や健康を保障し、雇用を生み出すという。企業や富裕層への増税分を成長戦略に充て、中間層の底上げを目指す戦略だ。かつて大恐慌後にルーズベルト大統領が打ち出したニューディール政策に重ねた。

 トランプ前政権が格差拡大を招いた大型減税は見直しても、保護主義路線は修正しないようだ。「米国製品を買おう」とも呼び掛けた。対中国を意識したのだろうが、日本や欧州にも気掛かりな点だろう。

 一方で「米国は戻ってきた」と述べ、世界を主導する役割を担う構えだ。100日で1億回以上を公約したワクチン接種は既に2億回以上を完了し、他国への供給も視野に入れる。また気候変動問題でも、パリ協定への復帰、サミット開催を成果として自画自賛し、覇権を維持する覚悟を見せる。

 ハリス副大統領、ペロシ下院議長の女性2人が後ろで見守る中、演説したバイデン氏は白人至上主義をテロと非難し、人種差別根絶や銃規制にも触れた。

 人権や民主主義を擁護し、同盟・友好国や国際協調を重視する姿勢は、おおむね好意的に受け止められたようだ。CBSテレビの世論調査に85%が「評価する」と答えている。

 しかし「大きな政府」を嫌う野党・共和党は批判を強めており、議会の協力を得るのは簡単ではあるまい。米国の分断は依然、根深い。今後、政策を実行に移す力量が問われる。

 対決姿勢を向けられた中国は「自国の民主主義の理想を他国に押し付けるべきではない」と強く反発する。

 バイデン氏はインド太平洋地域での軍事力の展開を強調してもいる。日本には、米中衝突の危機を回避しつつ、東アジアの安定を図るよう役割を果たすことが求められる。

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