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少年法の改正 更生の理念を忘れるな

2021/5/4 6:48

 来年4月から民法上、18歳以上は成人とみなされる。それに合わせ、事件を起こした18、19歳を18歳未満とは別扱いにして厳罰化を図る、少年法改正案が参院で審議されている。

 上川陽子法相は、「積極的な社会参加が期待される立場となった。広く刑事責任を負うのが適当だ」と述べる。

 しかし、18、19歳は十分に成熟しているとは言い難い。罪を犯しても、教育によって立ち直りの可能性がある。厳罰化することが「更生の機会を阻害する」と指摘する声もある。保護と健全育成という少年法の理念を踏まえれば、厳罰化には疑問が残る。

 現行の少年法では、全ての事件を家庭裁判所に送る。家裁から検察官に送致(逆送)する対象は、殺人や傷害致死といった「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪」に限られている。

 改正案は、少年法の適用年齢を20歳未満に維持しつつ、18、19歳は「特定少年」と位置づけて、20歳以上と同様の刑事手続きを取る事件を拡大する。現行の殺人などに加え、強盗や強制性交など「法定刑の下限が1年以上の懲役・禁錮に当たる罪」が追加されている。また起訴後の実名報道も解禁する。

 しかし、同じ罪に問われても犯行の状況はさまざまである。一律に刑事罰の対象とすることで、立ち直りの機会を奪ってしまわないか。

 そもそも法改正の議論は、公選法で選挙権年齢が18歳以上になったことが始まりだった。それに合わせて民法の成人年齢も引き下げられることになった。

 一人前の大人と認められる以上は相応の責任を負わせるべきだという考え方がある。また、被害者らの強い処罰感情があることは理解できる。

 それでも教育と更生を重視してきた法の趣旨は尊重すべきではないか。少年法は、発達途上にある少年の特性を考慮し、教育によって非行を防ぎ、立ち直りを促すことに重きを置く。

 事件が家裁に送致されれば、心理学や教育学などの専門家らが家庭環境や成育歴、交友関係をきめ細かく調べ、行動観察を行う。家裁はその結果を基に、保護観察や少年院送致などの処分を決め、更生に向けた教育や指導をする。そうすることが再犯を防ぐことにつながる。

 起訴後に実名報道を可能とする点にも問題がある。裁判所は起訴された事件でも、少年に保護処分が相当と判断した場合は再び家裁に移送する。しかし起訴段階で実名が出てしまえば、社会復帰が難しくなろう。

 名前や事件の内容がひとたびネット上にさらされれば、削除は難しく、半永久的に残る恐れがある。立ち直るどころか、追い詰められることもあるのではないか。

 昨今では、ネット上で誹謗(ひぼう)中傷された若い世代が自ら命を絶つケースも表面化している。例えば、事件を起こした少年が罪を償った後も偏見にさらされたり、社会から疎外されたりする恐れもある。更生を促す観点から、慎重に考慮する必要がある。

 成人年齢を引き下げるほかの法律と整合性をとるという理由だけで改正を急ぐことがあってはならない。指摘される数々の問題や懸念を解消するため、国会は議論を尽くすべきだ。

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