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所有者不明土地対策 効果見極め負担軽減を

2021/5/7 6:58

 土地の所有者が分からなくなるのを防ぐため、民法や不動産登記法の改正を含む関連法が、今国会で成立した。持ち主の死後、相続されないまま放置される「所有者不明土地」が全国的に増え、問題となっているためだ。治安や景観の悪化のみならず、災害復旧の用地買収や再開発の妨げになるなど、地域社会にさまざまな影を落とす。

 問題を重く見て対策に乗り出した政府は、関連法を不明土地対策の「総仕上げ」と位置づける。関連法では、3年以内の相続登記を義務化するほか、一定の要件を満たせば、相続した土地の所有権を、国の管理に委ねられる制度も新設する。

 団塊世代から次世代へ相続が増えるのを前に、新たな不明土地の発生を抑える法的な枠組みが整ったことは評価できよう。

 所有者不明土地は、不動産登記簿などで持ち主が分からなかったり判明しても連絡が取れなかったりする土地を指す。2016年の時点で既に410万ヘクタールに上り、九州の面積を上回っているという。

 問題は、東日本大震災の後に顕在化するようになった。所有者が分からず同意が得られないため、被災地の復興計画が進まないケースが出てきたためだ。こうした土地は、復興に限らず、再開発や公共事業にも支障を来す。放置されれば、安全・安心の観点からも見逃せない。

 関連法は、相続人が不動産の取得を知ってから3年以内に所有権移転の登記をすることや、引っ越しなどで名義人の住所が変わった場合に2年以内の変更登記を義務化する。正当な理由なく怠れば、それぞれ10万円以下と5万円以下の過料とする。

 登記の促進が目的ならば、まず周知の徹底だろう。そもそも相続人だという自覚のない人も多かろう。相続を知らせる仕組みも要るのではないか。

 相続を知っていながら登記が放置される背景には、手続きが任意であり、手続きするとなれば手間や費用がかかることがあるようだ。登記には「登録免許税」もかかる。登記に伴う負担を減らす策なども検討すべきだ。

 関連法では、登記の手続きを簡略化する。これまでは相続割合などが決まるまで登記できなかったが、法務局に自分が法定相続人の一人であることを申告すれば、登記の申請義務を果たしたとみなす制度も新設する。

 相続した土地の所有権を手放して国の管理に委ねることも可能にする。しかし、更地で担保に入っていない▽権利の争いがない―などの要件を満たし、申請者が10年分の管理費用相当額を納める必要がある。こちらも負担に感じる人はいよう。

 政府は18年成立の特別措置法で、公共的な事業であれば自治体などが不明土地を10年間使える仕組みを作った。対策の「総仕上げ」とする今回の関連法でどれだけ登記が進むのか。国は、動きを見極めながら随時見直しを行うべきだ。

 登記の義務化にとどまらず、所有者の負担軽減など、幅広い環境整備によって、不明土地をなくしていく必要がある。

 人口減少や都市部への流出で所有する土地と離れて暮らす人も多い。登記したとしても手入れができず放置されるケースも出てこよう。今後はそうした問題を解決する仕組み作りにも取り組まねばならない。

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