コラム・連載・特集

緊急事態宣言の延長 ちぐはぐで疲弊限界だ

2021/5/9 6:00

 東京、京都、大阪、兵庫の4都府県に発令中の緊急事態宣言が31日まで延長される。新たに愛知、福岡両県を追加し、対象を6都府県に広げる。

 3回目となる新型コロナウイルスの緊急事態宣言は先月下旬に期間を17日間に設定、発令された。短すぎるという声にも、菅義偉首相は「短期集中で抑え込む」と強弁していた。だが懸念された通り、延長せざるを得なくなった。見通しや状況判断が甘かったのは明らかだ。

 さらに延長期間中の対策には首をかしげざるを得ない。百貨店など大型商業施設への休業要請や大規模イベントの観客制限は緩和するというのだ。

 宣言を延長、拡大しながら、対策の中身は緩める―。何ともちぐはぐな対応だ。間違ったメッセージとなりかねず、感染を抑え込めるとも考えにくい。大阪府などは休業要請を続けるといい、自治体で対応が割れる。 また7県のまん延防止等重点措置は宮城県を解除するが北海道、岐阜など3道県を加える。

 休業要請が続く酒類提供の飲食店をはじめ国民の疲労感も限界が近いのではないか。場当たり的な対策を繰り返す政府に疑念が募っているようだ。

 政府の要請もこれまで通りの協力が得られるとは限らない。国民が納得できる明解な戦略を早急に示す必要がある。

 「人流は間違いなく減った。効果が出始めているのではないか」。おとといの首相の言葉に納得する国民は多くあるまい。感染者は高止まりしている。

 確かに東京や大阪の繁華街では人出の減少も見られた。だが首都圏近郊の酒類提供を制限していない地域や観光地には例年に近い人出があったともいう。大型連休明けの交通機関は通勤・通学の客であふれた。

 宣言対象地域にとどまらず、全国で感染者は増加している。首相が会見したおととい、全国の感染者は6千人を超えた。

 連休中は帰省客や観光客といった、宣言地域などからの県境をまたいだ移動が昨年より増えたとみられる。地方で感染者が増加してきた一因だろう。

 第4波の背景に感染力の強い変異株の広がりがある。懸念されていたのに、2度目の宣言解除を急いだことが響いている。

 医療体制は破綻の危機だ。中でも関西、特に大阪府では重症者用病床の数を重症者が大幅に上回る。7日は過去最多50人の死亡が確認された。変異株が急増している。首都圏や地方でも病床や医療スタッフの確保など体制整備を急がねばならない。

 首相は会見で1日100万回のワクチン接種をぶち上げた。実現できれば状況が好転する可能性はある。だが医療従事者でさえ接種率は2割ほど。高齢者は1%にも満たない。ワクチンが確保できたとしても、一方で医療現場が逼迫(ひっぱく)する中、円滑に接種する態勢をどう築くのか。

 宣言延長の経済への打撃は深刻で、個人消費など経済損失は1兆円との試算もある。外食や宿泊業は特に苦しく、中小企業の倒産が増えかねない。大阪などの繁華街では休業や時短の要請に従わず、酒類も提供する飲食店が目立っているという。

 医療、経済、生活の疲弊は限界に達しつつある。感染抑止と収束へ国民が理解、協力できる一貫性のある対策と戦略が政府には求められている。 

  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

社説の最新記事
一覧