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入管難民法改正案 これでは人権守られぬ

2021/5/10 7:01

 政府が今国会で成立を目指す入管難民法改正案に対し、批判がやまない。

 国会審議が本格化する中、日本で暮らす外国人や支援団体が連日のようにデモや集会で抗議の声を上げる。作家や俳優ら著名人の間でも批判が広まり、与党は7日に目指していた衆院法務委員会での採決を見送った。

 不法滞在で国外退去処分を受け、出国を拒んだ外国人が入管施設に長期収容されるケースが増えている。政府は、この問題を解消するための法改正だと強調している。

 改正案は在留資格がない人の送還を徹底させることに主眼を置く内容だ。これでは迫害から逃れてきた難民の人権を守れず、誤って強制送還する危険性が残る。長期収容の根本的な解決につながるとは思えない。

 とりわけ、難民認定を申請している間は強制送還が停止される現行ルールを変更することに厳しい視線が注がれている。

 これまでは制限がなかった申請回数を原則2回までとし、同じ理由で3回目以上申請した人はいつでも強制送還できるようにする。さらに、それを拒否すれば、刑事罰を与える。

 日本も加入する難民条約は、人種や宗教、政治的な意見を理由に迫害される恐れがあり、国外に逃れた人を難民と定義。加入国に保護を義務付けている。

 しかし日本が昨年、難民と認定した人は47人だけだ。申請した人のわずか1%ほどにとどまり、認定率は先進諸国の中で極端に低い。

 申請を何度も繰り返して難民と認定されたり、裁判で争った末にようやく認められたりする人も少なくない。改正案のような形で強制送還すれば、難民認定すべき人の生命に関わる事態を招くリスクが高まる。

 難民条約には迫害の危険がある場所への送還を禁じる「ノン・ルフールマン原則」がある。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が政府の改正案に重大な懸念を示し、全面見直しを求めた。極めて異例で、政府は重く受け止めるべきだ。

 入管施設での長期収容は2010年代後半から急増した。19年末の時点で退去命令を受け、収容中の外国人942人のうち収容6カ月以上は462人に上り、3年以上も63人いた。長期収容の常態化で、トラブルが相次いでいる。

 2年前には長崎県の施設で長期収容に抗議してハンガーストライキ中のナイジェリア人男性が餓死し、法改正議論のきっかけになった。今年3月にも名古屋市の施設で体調が悪化したスリランカ人女性が死亡した。

 日本の入管行政は難民認定率の低さに加え、身柄の収容の可否に、裁判所などが関与せず法務省の裁量で決められる点などが問題視されてきた。

 人権上の観点から難民認定手続きの公正さや透明性の確保が欠かせない。改正案はこの点を置き去りにしたままだ。

 野党は、難民の認定審査を行う独立組織の新設や収容の可否を裁判所が判断することなどを盛り込んだ対案を国会に提出している。検討してもらいたい。

 国外退去を徹底するだけでは、長期収容の問題は解決できない。政府・与党は改正案の抜本的な修正を図るべきだ。それができなければ、廃案にして仕切り直す必要がある。

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