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ネット広告規制 透明性、どう確保するか

2021/5/11 6:32

 政府は、2月に施行した巨大IT企業の規制新法の対象をインターネット広告に拡大する最終報告をまとめた。急成長するネット広告市場で米グーグルや米アップルなど巨大ITの寡占が進み、公平公正な取引がゆがめられると懸念している。

 ネット広告は2019年にテレビ広告を売上高で抜き、20年には2兆円を超す最大の媒体に成長している。巨大ITはその市場に圧倒的に優位な立場で君臨し、ネットを通じた複雑で大量の取引をブラックボックスに置いて巨額の利益を得ている。

 透明性や公平性の確保を目指す新法をネット広告にも適用するのは当然だ。だが、最終報告では解決策を技術革新や巨大ITの自主的な取り組みに委ねるものも少なくなかった。政府は適用を目指す21年度以降までに、規制が実効性を上げられるよう内容を精査すべきだ。

 巨大ITは検索システムや会員制交流サイト(SNS)の無料サービスを消費者に提供し、その代わりに手に入れた膨大な個人情報をビジネスに結びつけている。

 市場への影響力が極めて大きい巨大ITに対し、広告主である企業は不利な契約にも応じざるを得ない弱い立場にある。

 最終報告が、巨大ITに広告主との取引実態の開示を求め、契約変更には事前通知などを必要としたことはうなずける。

 また消費者は検索履歴などから趣味や好み、居住地などを把握され、知らないうちにターゲティング(追跡型)広告の対象になっている。これを保護するために情報活用を拒否できる方法を巨大ITが消費者に適切に示すよう求めたのも当然だ。

 ただ、日本の規制新法は政府が大枠を示しつつ官民で「共同規制」する手法を取るという。

 公正な取り組みや実行を巨大ITの自主性に委ねるだけでは不十分だ。最終報告が「営業上の秘密」として広告価格や手数料の一律開示を難しいとしたことも甘いと言わざるを得ない。

 米国の司法省は昨年末、反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いでグーグルを提訴した。海外では巨額の制裁金を課すような強硬な動きも起きている。

 公正取引委員会は消費者に十分な説明のない個人情報の活用は独禁法上の「優越的地位の乱用にあたる」という見解を示している。独禁法を積極適用するような対応も考慮すべきだ。

 巨大ITはしたたかだ。規制の先手を打ってアップルは先月、ネット市場に個人情報を提供するか否かを利用者が選択できるようにした。ターゲティング広告の転機になる選択をする一方で、それに代わる新たな手法の導入も目指すという。

 巨大ITは情報力も技術力も圧倒的で対応力も極めて高い。人工知能などを生かして新たな広告手法を生み出し、それまでの規制を有名無実化することもあり得る。個人情報を内部に抱え込むことでさらに優位な立場を築いてしまう可能性もある。

 検索などネット広告を収益源にしたさまざまな無料サービスは手軽で便利だ。もはや人々の暮らしと切り離せなくなっているのは世界共通の課題だろう。

 だとすれば政府は巨大ITに公平公正な市場形成に努めるよう促す以外ない。各国と協力して広告主や消費者を保護する規制を着実に進めるべきだ。

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