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赤木ファイル 「黒塗り」開示、許されぬ

2021/5/12 7:00

 これほど注目された問題の文書を探すのに、なぜ1年以上もかかったのか。都合が悪いから隠そうとしたのか。そんな疑念が拭い切れない。

 森友学園への国有地売却を巡る問題で、財務省による決裁文書改ざんの過程をまとめた文書「赤木ファイル」である。不正に加担させられ、自殺に追い込まれた近畿財務局の元職員、赤木俊夫さんがつづっていた。その存在を国が初めて認めた。

 赤木さんの妻が国側に損害賠償を求めた訴訟で、6月23日に大阪地裁で開かれる次回の口頭弁論に、国はそのファイルを出す。ただ、第三者の個人情報が含まれているので「黒塗り」などのマスキングをするという。

 遅くなった上、隠し立てすることは許されない。黒塗りせず、ファイルは全面開示しなければならない。非公開にするかどうかは、国ではなく、裁判所が判断すべきである。

 ファイルは、改ざんについて時系列でまとめた文書や、財務省理財局と近畿財務局との間でやりとりされたメールと、その添付資料などだという。

 その存在は、書いた赤木さん自身が妻に伝えていたほか、元上司の証言でも明らかである。

 にもかかわらず、国は「確認されていない」とごまかしてきた。あるかどうか、今月6日までに答えるよう大阪地裁に促され、ようやく存在を認めた。

 麻生太郎財務相はおとといの衆院予算委員会で、存在を確認した時期について「かなり前の方からだ」と明かした。事実だとしたら不誠実極まりない。

 ところが、きのうは一転、「4月20日ごろ報告が上がってきた」と軌道修正した。3週間前に知ったなら、「かなり前」とは言うまい。何を隠すつもりなのか。疑念は一層深まった。

 しかもファイルは赤木さんが個人的に作成したもので、職務上の行政文書ではないと主張する。理解できない。上司の指示で改ざんを強いられた以上、業務に関わる公文書である。それを個人の文書だと強弁するとはあきれるほかない。もし赤木さんの私的文書だと言うなら、すぐ妻に返すのが筋である。

 改ざんの経緯について、財務省は2018年、調査報告書を公表した。当時の安倍晋三首相が17年2月、森友学園への国有地売却について、妻の昭恵氏も含め関与を全面否定したことなどをきっかけに、交渉記録が廃棄された。当時の佐川宣寿理財局長が主導して、改ざんが進められたと結論付けていた。

 しかし改ざんは、誰が何のため、具体的にどう指示したか、詳細な経緯は不明のままだ。そうした空白部分に、赤木ファイルは光を当てることができるかもしれない。真相解明と再発防止のため、全面開示が必要だ。

 森友学園の問題は、国有地売却での8億円を超す異例の値引きが発端だった。その理由をはじめ、財務省による内部調査では、疑問が数多く残されている。第三者による徹底的な調査を、国は決断すべきである。

 国会の責任も重い。森友問題に関する政府答弁のうち、事実と異なる答弁は安倍政権下だけで139回もあったという。事実に基づかぬ議論で良いはずがない。開会中の通常国会にファイルを出させ、国権の最高機関として、改ざんの空白部分の解明に努めることが求められる。

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