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サイバー攻撃 官民連携し被害を防げ

2021/5/13 6:42

 中国の関与が疑われる大規模なサイバー攻撃が、警視庁の捜査で明らかになった。

 2016、17年に宇宙航空研究開発機構(JAXA)など、国内の研究機関や企業が相次ぎ標的とされた攻撃である。実行したハッカー集団は中国人民解放軍と事実上一体という。

 国家ぐるみで攻撃を仕掛け、機密情報を狙う中国の姿が鮮明になったといえよう。情報流出リスクへの対応が改めて問われている。官民は連携して被害を防がなくてはならない。

 警視庁公安部は先月下旬、中国籍で30代の中国共産党員の男を私電磁的記録不正作出・同供用容疑で書類送検した。中国国営の大手情報通信企業に勤務するシステムエンジニアで、攻撃で使用された国内のレンタルサーバーを偽名で契約した疑いが持たれている。

 攻撃に使われたマルウエア(悪意あるソフト)の種類などから、人民解放軍と事実上一体とされるハッカー集団「Tick(ティック)」が浮かび上がった。書類送検された男のサーバー契約時のIDやパスワードはティックに売却されていた。ティックはあの手この手で、三菱電機や日立製作所、IHIといった日本の防衛関連企業など約200機関を標的にしていたという。

 驚くのは、この党員のほかに、中国籍の元留学生も事件に関与したとみられることだ。軍関係者の女が事件前、元留学生に「国家への貢献」だとして契約を指示したことも分かっている。元留学生は事情聴取されたものの、既に出国している。徹底的に捜査を続け、国家ぐるみの工作活動の実態解明を急がなくてはならない。

 中国はさまざまな人脈を駆使し、日本の機密情報の入手に力を注いでいる。重く受け止める必要があろう。

 日本の防衛白書によると、人民解放軍の戦略支援部隊の中には、サイバー攻撃部隊が編成されており、人員は3万人規模に上る可能性があるという。警視庁は、そのうちの日本や韓国を標的とする部隊が、このサイバー攻撃に関与したと見ている。

 中国当局は関与を否定しているが、世界からは疑いの目を向けられている。17年に、中国が「国家情報法」を施行しているからだ。

 中国の企業や個人に国内外で情報活動への協力を義務付けた法律である。それに基づき、世界各国の先端技術を持つ企業や研究機関に属する中国人技術者から情報を集めているとされる。今回の事件でも中国当局が訪日経験のある留学生らと接触し、協力させた構図が浮かぶ。

 しかしそうしたことを続けていては、世界中にいる中国人技術者や留学生らが怪しまれ、苦境に追いやられる懸念がある。中国は国際社会との付き合い方を考え直すべきではないか。

 最近も世界中でサイバー攻撃は相次いでいる。ハッカー集団が情報を盗んだとしてインターネット上に犯行声明を出し、企業に金銭を要求するようなケースも後を絶たない。

 求められるのは、こうした脅威に危機感を持って防御を固めることだ。ただ国家ぐるみの攻撃に個別の機関や企業が対抗するには限界がある。摘発されるのは氷山の一角だ。国を挙げ、早急に手を打つ必要がある。

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