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広島・岡山に緊急宣言 甘い見通し、混乱招いた

2021/5/15 6:36

 新型コロナウイルスの感染対策で、広島、岡山、北海道の3道県に緊急事態宣言が再発令されることになった。

 政府は当初、宣言の前段階となる「まん延防止等重点措置」への対象追加で乗り切ろうとしていたが、専門家でつくる基本的対処方針分科会からより強い対策を求められ、方針転換を迫られた形だ。

 宣言や重点措置の政府案を巡って、分科会の専門家から待ったがかかり、再諮問となるのは初めてのことだ。迷走し、ばたついた感が否めない。

 猛威を振るう変異ウイルスに対する危機感と情報が、政府と専門家や地方自治体との間で十分共有できているのだろうか。政府の現状認識の甘さが、混乱を招いたと言わざるを得ない。

 分科会では、とりわけ北海道の状況に懸念が強く示されたという。まん延防止措置の対象地域になっていたものの、新規感染者が急増し、13日には過去最多の712人に上った。

 道知事は緊急事態への移行を求めていたが、政府は「まん延防止措置で十分」といったんは見送る方針だった。

 広島や岡山は、感染の急激な拡大が不安視されたようだ。

 変異ウイルスは従来のものよりも感染力が強く、感染拡大のスピードも速い。若年層でも重症化するケースが目立つ。

 12日時点で、直近1週間の10万人当たりの新規感染者数は広島で35人、岡山で49人と、いずれも感染状況が最も深刻なステージ4(爆発的感染)の基準の25人を大きく上回った。病床使用率も広島で56%、岡山で71%と、ステージ4の基準の50%を超えていた。

 ステージ4の状況から脱するために発する緊急事態宣言の運用方針から見れば、十分検討すべき段階にあった。「遅すぎる」と感じた3道県の住民も少なくなかろう。

 医療現場の負担を軽減し、救える命が失われることのないようにするには、先手先手で対策を講じる必要がある。政府はしかし宣言ばかりか、重点措置の適用にも消極的に見える。

 広島など3道県の宣言対象への追加とともに、群馬、石川、熊本の3県がきのう重点措置の対象に追加された。一方で、福島や長崎、香川など複数の県が重点措置への適用を求めていたが、見送られた。

 営業時間短縮の強化など、まずは都道府県独自の取り組みを求めるのが政府のスタンスだ。明確な基準を示すことなく、感染対策の強化に及び腰になっていてはいけない。東京五輪を控え、これ以上感染状況が悪化しているイメージを持たれたくないとの思惑があると勘繰られても仕方あるまい。

 宣言の期間は16日からで、既に発令されている6都府県に合わせて31日までとした。これまでと同じように飲食店や大型商業施設への休業や時短要請などの対策が柱となりそうだ。

 1年余りの自粛疲れに宣言慣れ、ワクチン接種が進まないことへのストレスも重なる。宣言発令中の東京や大阪の繁華街では人通りが十分減らず、要請に協力しない店もある。宣言の効果が分かりにくくなっている。

 政府はこれまでの対策の過ちや足りなかった点を素直に認め、国民に理解と協力を得る姿勢を強く打ち出すべきだ。 

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