コラム・連載・特集

細る若手キャリア官僚 組織のゆがみ正さねば

2021/5/16 6:40

 「キャリア」と呼ばれる中央省庁幹部を志す若者が減り続けている。官僚として国民に尽くす仕事だけに放置できない。

 本年度の国家公務員採用試験で、かつてのI種に当たる「総合職」志望者が過去最少となった。少子化の影響もあろうが、前年度を下回るのは5年連続で下落幅は過去最大となった。

 逆に、若手キャリアの退職者は急増している。中央省庁は今や、優秀な人材が数多く集まる魅力ある職場ではなくなった証しだと言えよう。

 私たちの国の将来像を描いて政策を立案し、その実現に努める組織である。若手の先細りを食い止めなければならない。原因をしっかり分析し、実効性ある対策を講じる必要がある。

 本年度のキャリア志望者は1万4310人だった。ピークだった1996年度の3分の1にも満たない。22歳人口は当時の半分までは減っていないから、人気の低下は明らかだ。

 一方の退職者。内閣人事局によると、20歳代での自己都合による退職者は2019年度で86人と、6年前の4倍を超えた。

 「予備軍」もじわり広がっている。19年11〜12月の調査では30歳未満の国家公務員で「辞職を準備中」「1〜3年程度のうちに辞めたい」と回答したのは男性で14・7%、女性は9・7%に上った。理由として、女性と30代の男性は「仕事と家庭の両立が難しい」を挙げる人が最も多かった。若手では「もっと自己成長できる魅力的な仕事に就きたい」も目立った。

 「ブラック霞が関」という言葉を生むほど深刻化している劣悪な労働環境が浮かび上がる。例えば長時間労働の常態化である。昨年10〜11月の調査では、20代キャリアの約3割で、正規勤務時間外の在庁時間が、過労死ラインの目安となる月80時間を超えていた。新型コロナウイルス対策などに追われる厚生労働省に限れば、今年1月、400人近くが月80時間以上もの残業を強いられていた。最も長い職員は220時間を上回った。看過できない異常事態である。

 国会対応も深夜までの長時間労働を強いられる要因という。委員会などで質問する国会議員からの事前通告が遅れるケースも少なくないようだ。そうした雑務の多くを若手任せにしている管理職や、国会議員の意識改革も含めて、改善が急がれる。

 政権とのゆがんだ関係も人気低迷に響いている。14年に設置された内閣人事局が、「政治主導」の名の下で省庁の幹部人事を左右できるようになった。人事権を握る政権に対する過度な忖度(そんたく)や萎縮が、各省庁で進行しているのではないか。

 安倍前政権を官房長官として支えた菅義偉首相は、政権の決めた政策の方向性に反対する省庁の幹部は「異動してもらう」と明言している。逆らえば左遷し、尻尾を振れば厚遇する―。これでは、公僕としての倫理や自由な政策論議が失われ、国民のための政治は実現できまい。

 実際、財務省では公文書が改ざんされ、不正のお先棒を担がされた職員が自殺する事態となった。最近も、総務省の接待問題など、幹部の不祥事が後を絶たない。国の将来を真面目に考える若者ほど、意欲をそがれてしまいかねないのが現状だ。早急に労働環境や政官関係のゆがみを正さなければならない。 

  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

社説の最新記事
一覧