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「対象外の飲食店が申請、おかしいのでは?」 緊急事態で国の支援金支給巡り戸惑い【こちら編集局です】

2021/5/21 22:11
一時支援金の制度を説明する中小企業庁のホームページ

一時支援金の制度を説明する中小企業庁のホームページ

 「一時支援金の対象ではない広島県内の飲食店が多数申請している。おかしいのではないか」。編集局にこんな声が届いた。新型コロナウイルス禍が続く中、1〜3月に首都圏などに出た2度目の緊急事態宣言で影響を受けた事業者に最大60万円を支給する国の制度への疑問だ。調べてみると、支給条件が分かりにくく、事業者たちが戸惑っている実情が浮かび上がった。

 ▽「時短営業か外出自粛の影響」「売り上げ半減以上」

 編集局にメールを寄せたのは福山市の税理士。「緊急事態宣言が出た東京などからの来店減により、売り上げが50%落ちた事業者が支給対象のはず。地元にそんな飲食店は多くない」と首をかしげる。申請の事前確認を担う福山商工会議所では制度が始まった3月8日以降、飲食店を中心に200件以上を扱った。これらは正しい申請なのか。

 中小企業庁のホームページ(HP)に載る支給条件を確認してみた。基本的なポイントは二つ。「緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業か外出自粛などの影響を受けていること」「2019年か20年に比べ、21年1〜3月の単月の売り上げが50%以上減少していること」とある。

 同庁の担当者によると、緊急事態宣言が当時出ていた関東、中部、関西、九州の11都府県の顧客の利用や取引がある事業者が対象ではあるが、地元客を含めても売り上げが半減していれば支給条件を満たすという。食材の卸業者やタクシー、宿泊事業者などが幅広く対象になる。1〜3月に宣言が出ていなかった中国地方でも、多くの事業者の申請に問題はなさそうだ。

 ▽地域一律みなす

 ただ、宣言地域からの利用客がいるという証明を飲食店などができるのかという疑問も湧いた。担当者に尋ねると、国の統計データなどで宣言地域からの旅行客が大きく落ち込んでいると判断できる地域は「外出自粛の影響で売り上げが一定に減少した」と一律みなすことができるという。

 こうしたデータがあれば、事業者は宣言地域に顧客がいることを自己申告するだけでいい。しかし当初、データの具体例がHPに少なかった。「条件が分かりにくい」との指摘を受け、後に加えたという。担当者は「宣言地域からの来店や取引が実際に減っていることが必須条件。その上で幅広い事業者を支援する狙いだった。複雑な制度になり、申し訳ない」と話す。

 現場の混乱は続いている。福山料飲組合(福山市)の豊田健路理事長(64)は「支給が受けられると知らないままの人がまだいるはず」と指摘する。自身が営む日本料理店は4月に受給したが、当初は申請できるとは考えていなかったという。無料通信アプリLINE(ライン)で組合員への周知に努めている。「出張や観光客が減る中で、支援金はありがたい制度。多くの事業者の救いになれば」と願う。

 ▽期限2週間延長

 当初の申請期間は今月31日までだったが、同庁は18日、期限を2週間ほど延長するとHPで発表した。制度の周知が行き届いていないと判断したためだ。

 それでも31日までにインターネット上で仮登録を済ませる必要がある。その後、商工会議所や商工会、金融機関、税理士などの登録機関で事前確認を受け、確定申告書などを添えてネットなどで申請する。

 ただ、この一時支援金は広島市内の多くの飲食店は受給できない。1、2月の時短営業などで広島県から協力金を受け取った場合は除外されるためだ。広島商工会議所にはこれまでに約480件の申請があり、多くは個人タクシーやホテルなどの事業者という。

 4月以降の緊急事態宣言に伴う影響を緩和する月次支援金の制度もある。中小企業庁は、疑問があれば事務局に問い合わせるよう呼び掛けている。フリーダイヤル(0120)211240。(村上和生) 

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