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ワクチン接種「かかりつけでない」と断られ…なぜ【こちら編集局です】

2021/5/22 20:40
広島市から届いた接種券を指さす80代男性(画像の一部を修整しています)

広島市から届いた接種券を指さす80代男性(画像の一部を修整しています)

 「新型コロナウイルスのワクチンは、かかりつけ医でないと打ってもらえないのか」。切実な声が広島市の80代男性から編集局に届いた。自宅近くの医院で「かかりつけじゃないから駄目」と断られたという。どんな事情が背景にあるのか。医療関係者たちに聞いた。

 ▽日頃診療 体の状態把握

 「コロナの感染が広がる今、できるだけ近所でワクチンを打ちたい」と男性は話す。頼りにしたのは、接種に応じる医療機関が載る新聞折り込みチラシ。ところが、最寄りの医院など5カ所に予約の電話をかけると、こう告げられた。「かかりつけじゃないので、お断りします」

 男性のかかりつけ医は市内にあるが遠い。連絡すると「うちは接種をしていません」と言われ、がくぜんとした。

 こうした状況がどうして生まれているのか。広島市健康推進課に聞いてみた。すると「かかりつけ医でないと接種を受けられないというわけではない」という。市がワクチン接種の対象としているのは、まず80歳以上の高齢者。既に、特設会場などでの「集団接種」も始まっている。24日から本格スタートする地域の医院などでの「個別接種」は、広く予約を受け付けている医療機関もある。

 ただ同課は「かかりつけ医での接種が望ましい。より安心して受けられる」と言う。医師が日頃の診療で患者の体の状態を知っているからだ。ワクチンを打った後の気分はどうか。痛みや疲れはないか。そうした副反応にも気付きやすい。

 現場の医師からすると、どうなのだろう。「かかりつけの患者を優先しがち」という声が少なくない。ある開業医(60)は「かかりつけの患者の接種予約だけでもパンクしそう」と打ち明ける。少ないスタッフで通常診療もこなさないといけない。「多くの人に接種したいが、忙しくて誰でもどうぞとはいかない」

 接種を「検討中」という開業医(68)も、患者に「先生、打ってや」とたびたび頼まれる。ただ、接種後に強いアレルギー反応が表れたら、今のスタッフだけで対応できるか。急なキャンセルが出たとき、すぐ他の患者に来てもらって打てるか…。「責任を持って接種するには、どうしても慎重になる」と話す。

 こうした懸念やリスクを抱えながら、医療機関に入るワクチンの接種料は1回2千円余り。医療関係者には「収入減につながりかねない」との声もある。

 広島市の高齢者は約30万5700人に上る。現在、個別接種を担っているのは病院や診療所計約500カ所で、眼科なども含む全体の4割近く。もっと参加が増えるのだろうか。市医師会の佐々木博会長(75)は「高齢者の不安を解くためにも、いかにワクチンを打つ回数を増やすか。通常診療の時間外や休日の接種も取り入れていく」と力を込める。(林淳一郎) 

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