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河井陣営への巨費投入 安倍氏の説明が必要だ

2021/5/26 6:36

 「関与していない」と述べて混乱を招いたため、前言を翻したようだ。2019年の参院選広島選挙区を舞台にした大規模買収事件で有罪が確定し、当選無効となった河井案里氏の陣営に自民党本部が投入した1億5千万円を巡る問題である。

 二階俊博幹事長はおととい、投入を組織決定した責任者は総裁だった安倍晋三前首相と、幹事長である自分だと述べた。

 責任が、トップの総裁と、事務作業を取り仕切る幹事長にあるのは言うまでもない。わざわざ言及したのは、「安倍1強」時代、国民ではなく党幹部への忖度(そんたく)を優先する風潮が与党内でも広がったからではないか。

 国民が何より知りたいのは、なぜ同じ選挙区に立候補していた現職の10倍もの巨費を河井陣営に投入したのか、誰が思い付き、どういう手続きを経て実行されたのか、である。

 1億5千万円のうち、1億2千万円の原資は政党交付金、つまり国民の税金である。知らんぷりは許されない。

 加えて大規模買収事件は、巨費投入で資金が潤沢になったことが引き金になったのではないか。そんな疑問も残されたままだ。巨費投入の責任を負う以上、安倍氏と二階氏が明らかにしなければならない。

 事件の最大の問題は何か―。中国新聞社とインターネット検索大手ヤフーが全国の有権者に実施したアンケートによると、党本部が1億5千万円について説明責任を果たしていないことだと思う、との回答が45・0%に上り、最も多かった。

 党本部は、関係資料が検察に押収されたことなどを説明しない理由に挙げている。しかし資料がなくても説明できることはあるはずだ。そうした努力をしないどころか、先週は幹部同士が責任を押し付け合った。

 発端は、巨費投入の責任があると昨年は認めていた二階氏が「関与していない」と繰り返したことだ。会見に同席していた林幹雄幹事長代理が、安倍氏側近で選対委員長だった甘利明氏も関与していたと付け加え、火に油を注いだ。

 「無責任で自分勝手な発言だ」と自民党広島県連が反発したのも無理はない。甘利氏自身もすぐ「1ミクロンも関わっていない」と全面否定した。

 それを受け、林氏は「根掘り葉掘り、党の内部のことまで踏み込まないでほしい」と逆ギレする始末。説明しようとする気はなく、逆に何かを隠そうとしているような振る舞いである。

 安倍氏はなぜ説明しないのだろうか。地元広島県連の強い反対を押し切って案里氏を立てた上、自分の秘書を広島に張り付けてまで支援した。選挙中は応援にも駆け付けた。巨費投入と符合する熱の入れようだった。「党に任せていた」との言い訳は、この件では通用するまい。

 巨費投入の「闇」に光を当てないと、政治不信を一層高めることになりかねない。「保守王国」広島での参院再選挙では自民党公認候補が敗れた。有権者は「金権ノー」「自民ノー」の訴えを発したのではないか。

 先のアンケートで「買収事件は広島県以外でも起きうる」との回答は95%を超えた。政治とカネ問題への憤りは確実に広がっている。安倍氏は、巨費投入の経緯や使途を徹底的に調べ、国民に説明を尽くすべきだ。

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