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総務省接待の報告書 許認可の在り方見直せ

2021/6/7 6:55

 総務省幹部の接待問題を調べている第三者の検証委員会は、放送事業会社「東北新社」の外資規制違反に関する報告書を公表した。違反を認識していた可能性が高いのに、事業認定を取り消さなかった対応について「行政をゆがめたとの指摘は免れない」と断罪した。

 接待攻勢で倫理観を失ってしまったのだろうか。定められたルールを勝手にねじ曲げるようでは、法治国家とはいえない。

 調査の最大のポイントは、外資規制違反の報告を総務省が受けていたかどうかだった。報告したという東北新社側に対し、総務省側は「記憶にない」と国会で答弁するなど、食い違いが目立っていた。

 検証委は、当時の井幡晃三衛星・地域放送課長(現放送政策課長)が、東北新社から違反状態との報告を受けて認識していた可能性が高いと判断。東北新社側の主張を認めた。

 ただ、会食などの接待が行政をゆがめたことまでは認めなかった。それでも、会食が正当化される余地は全くなく、国民の行政不信を著しく損なうことは明らかだと、くぎを刺した。

 ではなぜ認定を取り消さなかったのか―。報告書は、政府が積極的に普及を進めていた超高精細の4K衛星放送との関連を指摘する。4K事業に参加する事業者が少ない中、東北新社は参加を望む貴重な事業者だった。そのため、取り消しをちゅうちょした、というのだ。

 子会社に衛星放送事業を引き継ぐことで違法状態は解消される。それを追認すれば、4K普及政策の推進になると自己正当化したとまで推測している。

 とはいえ疑問も残る。違反を報告し子会社に引き継いでいた2017年8月に井幡課長を会食に招いているからだ。1人3万円を超す飲食費に加え、2万8千円余の東京ドームのプロ野球観戦チケットも渡している。なぜこんなに厚遇したのか。

 調査の不十分さは検証委も認めている。総務省職員が協力的ではなく、任意調査の限界を感じたという。例えば文書やメールなどを出すよう求めたのに、存在してもおかしくないはずの東北新社とのやりとりの資料が見当たらなかった、という。

 聞き取り調査に対しても、多くの職員が「覚えていない」との発言を繰り返した。一部職員は、指摘されるまで会食などの事実を申告しなかったという。「ばれなければよい」といった倫理観しか持っていないようなら、信頼回復は望めまい。

 そうした職員の姿勢は武田良太総務相にも責任がある。調査しないうちから「行政はゆがめられていなかった」と繰り返すなど危機感を欠いていた。求められるのは、わずかな悪弊でも見逃さない覚悟ではないか。

 政策の立案と円滑な実行のため、情報交換をはじめ業界との接触は必要だという意見もあろう。ならば放送・通信行政と、許認可権限の切り離しを検討すべきではないか。

 政府が放送・通信を監督する先進国は日本ぐらいという。欧米や韓国、台湾などを参考に、政府から独立した委員会が放送局に免許を与える仕組みを考えてはどうか。原子力規制委員会のようなイメージだろうか。許認可や、組織の在り方を抜本的に見直さなければ、行政はまたゆがめられかねない。

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