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トイレのハンドドライヤーまだ使えないの? 再開慎重、客の反応も心配 実験では感染リスク低く【こちら編集局です】

2021/6/8 19:17
使用中止している商業施設のハンドドライヤー(広島市中区)

使用中止している商業施設のハンドドライヤー(広島市中区)

 「トイレのハンドドライヤー、まだ使えないの?」。疑問の声が編集局に届いた。新型コロナウイルスの感染を恐れ、昨春から多くの施設がハンドドライヤーの使用を中止している。しかし最近は感染リスクが低いとの実験結果を基に、オフィスなどで使用を再開する動きもある。もう大丈夫なのだろうか。

 広島市中心部の百貨店や地下街、スーパー、コンビニなどのトイレを巡ってみた。ほとんどのハンドドライヤーに使用中止の張り紙がされている。中区の大型商業施設では、感染が拡大した昨年3月にやめたという。担当者は「近くの施設も動かしていない。感染状況も落ち着かないので、しばらくこのままにします」。こうも言う。「ガイドライン通りにしています」

 多くの施設が判断基準にするのが、感染拡大防止予防のガイドラインだ。百貨店、劇場、駅など場所別にそれぞれの業界団体が策定している。国の感染症対策専門家会議(当時)が昨年5月に出した提言では、トイレの項目で「ハンドドライヤーはやめる」と記した。この提言にならい、各ガイドラインは使用中止をうたっている。

 この状況に「科学的根拠がない」と異を唱えたのが経団連だ。オフィスと製造現場のガイドラインを今年4月に改定。ハンドドライヤーを製造する三菱電機(東京)が昨秋行った実証実験などを根拠に、使用できるとした。いったい、どういうことなのか。

 ハンドドライヤーは、温風で手を乾かす際に水滴が飛散し、ウイルスも一緒に漂って危険だと考えられていた。専門家が監修した実証実験では、水滴の蒸発後に残るウイルスを含む微粒子(エーロゾル)の発生量を、実測や解析で検証。発生量は洗面所で手を洗う時より少ない。ハンドドライヤーを使用した時の感染確率は0・01%と極めて低いという。

 ただ、使用には条件も付けている。手を乾かす際にいろんな人の水滴が機器に付いて不衛生になる恐れもあるため、定期的なメンテナンスや清掃をすることを求めている。

 経団連ソーシャルコミュニケーション本部は「海外では普通に利用していることなども分かってきた」とする。内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室は「専門家が認める根拠があり、清潔さを保てるなら使うことに問題はない」との立場だ。

 だが、商業施設などにすぐ動きが広がるわけではないようだ。小売業のガイドラインを策定する日本百貨店協会は「オフィスに比べて幅広い人がトイレを使うので管理が大変。他の業界団体や専門家との調整もいる」と慎重な姿勢だ。広島市内のスーパーなどには「使用を再開したことへのお客さんの反応も心配で…」との声もある。

 手洗いの専門家はどうみているのか。広島文教大の西山美香准教授(保健学)は「感染防止には、洗った手を乾かすことが先決。ハンドドライヤーを使っても問題ないですよ」と言う。ぬれた温かい皮膚は細菌やウイルスが好む環境。水気を切らないままでは、ウイルスが新たに付いたり、手で目や鼻を触って体内に入ったりしてしまう。ぬれた手をただ振って乾燥させると、ウイルスを拡散させてしまう恐れもある。

 ただ「使い方には気を付けて」と促す。ハンドドライヤー本体に触れないよう手を入れ、乾くまで引き出さない。「上に向かって口が開いているタイプなら、側面から手を入れて、上に引き出しましょう」。多くの人が使う物にむやみに触れない、という感染防止の基本を守ることが大切なようだ。(田中謙太郎) 

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