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最低法人税率G7合意 国際連携で税逃れ防げ

2021/6/9 6:47

 先進7カ国(G7)の財務相会合で、世界共通の最低法人税率を新たに設け「15%以上を目標とする」ことが決まった。

 近く開く経済協力開発機構(OECD)加盟国の会議を経て、来月の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議での合意を目指すという。

 1980年代から先進国を中心に法人税の引き下げ競争は続いてきた。企業活動が盛んになれば税率を下げても税収は伸びる―。企業誘致を発展につなげる理論は現実にはうまくいかず、財政が悪化して「底辺への競争」(イエレン米財務長官)になっていた。

 低税率の国や地域に拠点を移して課税を逃れる動きも表面化した。今も巨大IT企業などは各国間の税制の網をかいくぐり、世界で年間10兆円の納税を回避しているとされる。

 不毛な引き下げ競争に歯止めをかけ、企業の税逃れを防ぐ国際的な枠組みをつくることは急務だ。コロナ禍で窮地に陥っている各国の財政も改善されると期待したい。

 先進国はすでに引き上げに動いている。米国はトランプ前政権が35%から21%に引き下げた税率を28%に戻すと表明。増税分はコロナ禍で計画した2兆ドル規模のインフラ投資に充てる予定だ。英国も19%から25%に約50年ぶりに引き上げる。

 途上国は企業誘致を図るため、低税率に抑えたいと主張するかもしれない。だが低税率の国や地域がたびたび課税逃れの舞台になっている負の部分を見逃すわけにはいかない。

 税率を引き上げれば、投資や開発に回す税収を得られる可能性がある。長い目で見ればプラス面も多いはずだ。

 日本の法人税率(国税)は86年度は43%だったが現在は23・2%にまで下げられている。8兆円の法人税収はピーク時の半分以下で、消費税収の4割、所得税収の半分以下にすぎない。

 企業の負担が軽くなったにもかかわらず、働く人の給与増など、税の再分配機能を高めたとは言い難い。企業の多くが内部留保を積み上げ、株主への配当や自社株買いなどに回していることは看過できない。

 企業の内部留保は2019年度で、475兆円に上る。8年間で200兆円も積み上がった。一方で、コロナ禍への対応で国債の債務残高は1200兆円にも達している。だが、経済対策をまだ緩めるわけにはいかない。

 米英のように、日本でも税制の見直しを急ぐべきだ。法人税率は引き上げ、業績好調な企業に応分の負担を担ってもらわなければならない。

 しかし政府・与党の動きは鈍いように映る。年内にある総選挙への影響を気にして及び腰になるようなことは許されまい。

 G7では最低法人税率に加えて巨大IT企業を対象に想定した「デジタル課税」のルールも合意された。デジタル課税は、支店や工場がない国でもサービスの利用者がいれば課税できるようにする仕組みだ。

 英仏などは独自のデジタル税を導入している。ルールを統一するための調整も課題だ。

 ネットを通じたグローバルな事業が展開される中、経済の変化に税制が追いついていない面もあった。国際協調のもと、時代に応じた公平な課税制度を構築する必要がある。

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